活発な火山活動が続く神奈川県の箱根山。
今月6日に、噴火警戒レベルが2に引き上げられその地下では火山性地震が頻発しています。
今回、NHKは研究者と協力し地震がいつ、どこで発生したのか初めて3次元で映像化。
大規模な噴火の兆候はないものの観測を始めてから最も活発になっていることが分かりました。
噴火した!
今、全国各地で火山活動が活発になっています。
あれが銀沼火口という噴火口ですね。
火山を抱える観光地では安全をどう確保するのか模索を続けています。
多くの活火山を抱える日本列島。
火山と共にどう生きていくのか考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
火山列島と呼ばれている日本。
世界全体の1割に当たる110の活火山があります。
今、その火山の活動が活発になっています。
神奈川県の箱根山同様火口周辺警報が出されている火山。
赤で印しました。
13あります。
去年の9月、御嶽山で水蒸気噴火が起き死者・行方不明者63人が出るという戦後最悪の被害となりました。
その後、去年11月には熊本県の阿蘇山で、21年ぶりにマグマ噴火が起きていますしことし4月には山形県、宮城県の県境にある蔵王山で警報が出されています。
ことしに入って鹿児島県の桜島では500回を超える爆発的な噴火が起きています。
豊かな温泉や肥沃な土壌など多くの恵みを、火山は私たちに与えてくれていますけれどもひとたび噴火が起きますと住民や観光客の命、そして人々の生活に深刻な影響が出ます。
それだけに、火山のリスクと向き合いながら、どのように火山と共生していけばいいのかが今、各地で問われています。
さて、神奈川県の箱根山でレベル2の火口周辺警報が出されてから2週間になります。
現在も火山性の地震が頻発しそして、小規模な水蒸気噴火が起きる可能性があるとして警戒が続いています。
立ち入りが規制されているのは噴火が起きた場合噴石が飛んでくる可能性のある半径およそ300メートル。
箱根町の一部、大涌谷周辺と限られたエリアです。
そのほかの場所では通常どおり、観光客の受け入れが行われています。
警戒が続く箱根山の地下で何が起きているのか。
火山活動の現状をご覧ください。
今月14日の箱根山の立ち入り規制エリア内の映像です。
調査に入った専門家が撮影しました。
温泉を供給するための設備から激しく噴き出す蒸気。
暴噴と呼ばれる現象でその勢いを制御できない状態になっていました。
過去、繰り返し噴火を起こしてきた箱根山。
およそ3000年前には地下のマグマが地表に噴出する大規模なマグマ噴火が起きました。
およそ800年前にはマグマの熱や高温の火山ガスで地下水が熱せられて噴き出す水蒸気噴火が起きています。
以来、噴火が起きていない箱根山。
その地下で今、何が起きているのか。
箱根山の火山活動の監視を続けている神奈川県温泉地学研究所です。
箱根山に設置された14の地震計から観測データがリアルタイムで送られてきます。
今回、NHKでは研究所の協力を得て地震がいつ、どこで発生したのかを初めて3次元で映像化。
その詳細を分析しました。
4月26日から始まった地震。
体に感じない地震を含め3週間で3000回以上起きています。
最初に研究員が注目したのが地震が起きている深さでした。
ほとんどの地震が深さ6キロ以内で起きていました。
箱根山のマグマだまりは地下10キロより深い所にあると考えられています。
マグマだまりに近い所で大きな地震が起きていないため今回、マグマは上昇しておらずマグマ噴火につながる兆候は見られないことが分かりました。
一方、小規模な水蒸気噴火につながる兆しが地震の分布から見えてきました。
当初、柱状の限られた範囲に発生していた地震は次第にその範囲が広がっていました。
マグマだまりに新たなマグマが加わることで火山ガスの量が増加。
上昇しようとするガスなどによって広い範囲で岩盤に圧力がかかり地震が起きていると考えられます。
火山ガスの量が増えていることは地表でも観測されています。
大涌谷などで噴き出している蒸気を専門家が採取。
ガスを液体に溶かすと地震が発生したあと、日増しに黄色が濃くなっていきました。
火山ガスに特有の硫黄の成分が増加していたのです。
さらに火山ガスによると見られる地震の数もこれまでより大幅に増えています。
観測を始めて以来最大規模だった2001年の群発地震と比較してみました。
発生からの3週間を比較すると地震の回数は6倍以上。
マグニチュード2以上の比較的規模の大きな地震も5倍起きていました。
研究所ではこうした傾向が続けば大涌谷の周辺に影響を及ぼすような小規模な水蒸気噴火が起きる可能性があると見ています。
火山活動が活発化する中地元の箱根町では早め早めの対策を取ってきました。
箱根町の山口昇士町長です。
山口町長は、大型連休のさなか気象庁の噴火警戒レベルが1の段階で、大涌谷の散策路への立ち入り規制を決定。
その後、噴火警戒レベルが2に引き上げられると大涌谷周辺のおよそ300メートルの立ち入りを禁止しました。
一方、山口町長は観光への影響は最小限にとどめたいと考えています。
先週、知事と共に規制されていない町内の観光地を視察。
ほとんどの地域では安全は確保されており通常どおり、観光客を受け入れていることをアピールしたいと考えています。
今夜は、火山活動のメカニズムに大変お詳しい、火山噴火予知連絡会会長で東京大学名誉教授の藤井敏嗣さんをお迎えしています。
その箱根山の下で何が起きているのか、火山ガスの量が増えているために、地震が頻発しているんではないかということですけれども、何がどのように起きているんですか?
箱根の地下深い所に、マグマのたまりがあると考えられているんですが、そこから非常に高温の、マグマとほとんど同じ温度の流体ですね、これは気体でもなく、液体でもない、圧力がかかっているために、どちらでもない、一種の流体が上がってきてるんですね。
これの量が恐らく増えた、それが地表近くに通路を見つけながら上がってくるために地震が増えているというふうに思われます。
通路を見つけようとして、その地盤を壊したりしていると?
それで浅い所では、それが地下水と混ざった熱水というのが作られてるんですが、その熱水がまた、地表付近で動いている。
そのために浅い所でも地震が起こるという状態ですね。
水蒸気噴火の可能性への警戒もされているわけですけれども、この水蒸気噴火が起きる可能性は、どう見てらっしゃいますか?
このままことが進めば、熱水が瞬間的に水蒸気に変わって爆発を起こす、水蒸気噴火を起こすということがありうるんですけれども、もう一つの可能性としては、しばらく地震活動が続いたあと、収束する、2001年と同じように、収束するという可能性もあるんですね。
そのどちらになるのか、今の段階ではまだ分かりません。
2001年のときと比べると、地震の頻度が多いと?
そうですね、地震は非常に多くなってます。
ただ、地震の起こり方も、非常に早い時期から地震が増えてきたので、2001年とも様子が違うんですね。
毎回、こういう活動は違いますので、同じようにことが起こるわけではないので、どういうふうに最終的に噴火にいくのか、それとも収まるのかというのは、もうしばらく見ないと分からないですね。
一番注意深く今、観測されている点というのはなんでしょうか?
地震の広がりとか、それから地盤の伸びって言うようなことを見てますね。
それでこれ、もし深い所でさらに先ほどの流体、熱い流体の活動が活発化するとすると、マグマ黙りの辺りでは何事か起こる可能性がありますから、それを調べるためには、地震の活動の広がり、あるいは地盤が、山が膨らむかどうかですね、そういうことを慎重に見ていく必要があるかと思います。
観測の態勢というのは十分ですか?
そうですね、ここは火山の中では、比較的よく態勢が取られてるほうです。
神奈川県が温泉地学研究所というのを設置してまして、25年以上、地震観測を続けているんですね。
そのおかげで今、何が起こってるかというのをわれわれはよく分かるようになっているわけです。
ただ、長引きますと、観測に当たってらっしゃる研究者の方々の、体力や気力っていうのが心配になりませんか?
今、少数の人間で一生懸命、観測を続けているわけですね。
これが長引くと本当に持たなくなってしまうので、支援が必要だと思いますね。
周辺の大学やなんかからの研究者の支援だとか、あるいは事務関係の処理をする人たちを、もっと増やしていかないと長い活動には、とても耐えられないと思いますね。
安全は大事、一方で観光業への影響も、最小限に抑えたいというのが、地元の気持ちだと思うんですけれども、これまでの対応は、どう評価されますか?
今のところ、非常によくやっていると思いますね。
特にことしの3月には、御嶽山を教訓にして、登山客、観光客の避難計画、避難のガイドラインというのを作ってるんですね。
それに基づいて、レベル1の段階から、少し活動高まったら遊歩道を閉じるとか、観光は継続するけれども道路だけは閉じるというようなことで、非常にきめ細かい対策を取ってきた。
レベル2になると、規制区域を広げるということをやって、今のところ、きちんとやっていると思いますね。
さあ、火山活動が活発化する傾向を見せている中で、過去に噴火を経験した観光地では、そのリスクと向き合いながら、火山とどう共生していけばいいのか、模索を続けています。
去年9月に噴火した御嶽山。
11月以降噴火は起きていませんが今も火口の周辺は警戒区域となっています。
御嶽山のふもと、木曽町です。
住民の多くが観光業に従事し山の恵みが生活を支えてきました。
この冬、火口から5キロほど離れたスキー場は積極的な誘致活動もあって噴火前とほぼ同じ数の客が訪れました。
御嶽山の5合目から7合目までをつなぐロープウェイです。
年間10万人以上が利用してきました。
当初、4キロだった警戒区域はこの春、大きな噴石が及ばなかった2キロ程度まで縮小。
ロープウェイは6月から営業が再開される見通しとなりました。
ロープウェイの会社を経営する今孝志さんです。
夏の御岳観光の柱となってきたロープウェイを再開してほしいと地域から要望を受けました。
今さんは、観光客の命を守ることを第一に考え山頂付近の駅に噴石から身を守るヘルメットやマスクゴーグルなどを配備。
噴火した際に、速やかに避難を呼びかけられるよう拡声器やサイレンなども設置する予定です。
今さんは、大きな被害を出した山で営業を再開することに複雑な思いを抱えながらもこの山と共に生きていこうとしています。
火山を抱える町で観光客の安全をどう守っていくのか。
NHKは今月、全国47火山のふもとの自治体を対象にアンケート調査を行いました。
その結果、130の自治体のうち観光客や登山者の避難計画を定めているのは14と1割ほどにとどまっていました。
避難計画の策定が進まない中で観光と安全確保の両立のために住民が積極的に関わっている地域があります。
北海道にある有珠山。
2、30年に1度噴火を繰り返してきました。
周辺には温泉街が広がり毎年、多くの観光客が訪れます。
地元で温泉旅館を営む川南恵美子さんです。
仕事の合間を縫って取り組んでいる活動があります。
観光客を案内しながら火山活動を監視する火山マイスターです。
川南さんたち35人が自治体から認定を受けています。
火山に異変があれば自治体や専門家に報告するほかいざというときに観光客に避難を呼びかける役割を担っています。
この制度が出来るきっかけとなったのは15年前の噴火でした。
有珠山では火山性地震が増えております。
自治体は、2日前から1万人余りの住民を避難させたため、犠牲者が出ることはありませんでした。
当時、避難の判断に関わった専門家は、過去の噴火の前の地震と似ているという住民からの通報が決め手となったといいます。
15年前の噴火で川南さんは4か月にわたり旅館を閉鎖。
その後も苦しい経営を迫られました。
しかし、火山マイスターとして活動を続ける中で火山に対する考え方も徐々に変わっていったといいます。
有珠山のように、地元で火山を熟知しているマイスターを育成する。
この制度の有効性ってどう捉えていらっしゃいますか?
これ、大変重要だと思いますね。
いろんな人が火山を見てるということは、変化がないかどうかを見てるっていうのは、非常に重要だと思います。
そして有珠山では非常に防災教育に力を入れてきたと。
そうなんですね。
1977年の1つ前の噴火から、有珠山の観測所を中心に、小学校、中学に火山防災教育をやってきたんですね。
それが2000年の避難がうまくいった最大の理由だというふうに思います。
一方で、箱根山のほうに観光客や登山客の避難計画を作っているところが、非常に少ない、こちら、ご覧いただきたいんですけれども、アンケートで14にとどまっていて、しかも住民の避難計画を作っている所も46にとどまっている。
これ、早急な対応が必要ではありませんか?
そうですね、それでまもなく法律が改正になって、自治体や観光業者に避難計画の作成が義務づけられることになっていますので、速やかに対応していただきたいと思いますね。
住民の安全、そして観光客の安全と同時に、観光業をやはり守るということも必要な中で、リスクを踏まえながら、どうやって火山と共生していけばいいのか、一番大事なことというのは、なんだと思われますか?
火山はいつも噴火しているわけじゃないんですよね。
むしろ噴火をしてないときのほうが多いので、そのときには火山に近づいて、火山のことをよく知るということが重要ですね。
先ほどの有珠山の防災教育も、火山を知るという教育なんですよ。
ですから、そのことがよく分かっていれば、噴火をしたときに、何が起こるのか、どういうことが起こるのかということが理解できていれば、突発的に何かが起こっても、身を守る行動が取れるようになります。
ですから、ふだん静かなとき、特に活動が活発でないときには、むしろ積極的に火山に近づいて噴火が起こったときに、どういうことが起こるのかというイメージトレーニングを含めて、火山を知るという努力を、むしろしていただきたいというふうに思います。
2015/05/20(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「活発化する火山 “共生”への模索」[字]
火山活動が活発化している箱根山。噴火警戒レベルが2に引き上げられた。箱根山の地下で何が起きているか実態に迫り、火山とどう共存するか考える。
詳細情報
番組内容
【出演】東京大学名誉教授 火山噴火予知連絡会会長…藤井敏嗣,【キャスター】国谷裕子
出演者
【出演】東京大学名誉教授 火山噴火予知連絡会会長…藤井敏嗣,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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