伊方原発:規制委「審査書案」了承 年明け以降にも再稼働
毎日新聞 2015年05月20日 20時44分(最終更新 05月21日 13時31分)
原子力規制委員会は20日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について、新規制基準が定めた安全対策を満たしていることを認める「審査書案」を了承した。早ければ年明け以降にも再稼働する見通しだが、半島の付け根にある同原発は住民避難に難しさを抱える。一昨年7月に施行された新規制基準は原子力防災対策を含んでおらず、重大事故時の住民の安全確保には依然課題が残っている。
事実上の「合格証」となる審査書案が出たのは、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に続き、今回で3例目となる。
20日了承された審査書案は約430ページ。3号機周辺で想定される地震の揺れ(基準地震動)や津波の高さ(基準津波)をそれぞれ引き上げるとともに、全電源喪失に備え、非常用発電機の多重化策などを盛り込んだ。運転は、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を使う「プルサーマル発電」となる。
伊方原発は九州に向かって延びる佐田岬半島の瀬戸内海側にあり、原発から岬の先端の間に約5000人が住む。避難経路が限られる中で、地震や津波による複合災害も考慮した避難計画を立てられるかどうかが今後の鍵となる。規制委の田中俊一委員長は20日の記者会見で「地元住民の不安解消のため(避難について)住民によく説明して理解を得る必要がある」と述べた。
規制委は21日から30日間、一般からの意見を公募して審査書案を完成させるため、正式な合格は7月の予定。再稼働には地元自治体の同意のほか、工事計画など二つの認可が必要となる。【酒造唯】
◇伊方原発3号機の「審査書案」骨子
<基準地震動>震源を特定した場合の最大の揺れを650ガルとする。
<基準津波>複数の基準津波を設定し、原子炉建屋などがある海抜10メートル以上の敷地に津波は到達しないと想定。
<地盤>重要施設付近にある6断層は、将来活動する可能性のある断層には該当しないと判断。
<電源喪失対策>非常用発電機を別々の場所に2台備える。
<火山>最大規模の噴火を考慮しても、原発に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価。
<水素爆発対策>原子炉格納容器の破損を防ぐため、電源を使わず水素を処理する装置などを備える。
<緊急時対策所>中央制御室と離れた別の部屋に設置する。