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 米国家情報長官室は20日、2011年5月に国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者をパキスタンの潜伏先で殺害した際に押収した資料を公開した。

 公開されたのは、機密解除になった書簡など約100点の原文と英訳。ビンラディン容疑者からアルカイダの幹部に宛てた書簡などでは、米軍の無人機を警戒し、居場所が特定されるのを非常に案じている様子がうかがわれた。

 妻がイランから潜伏先にやってくる際にも「イラン人は信用ならない」として、発信器類が仕込まれていることを疑い、妻の全ての荷物を置いてくるように指示。幹部には、インターネットの使用を避けて手紙でやりとりするように命じている。過去に居場所が分かり米軍などに爆撃や殺害、逮捕されたメンバーのリストもあり、「衛星通信を使った」「インターネットを頻繁に使った」などと失敗原因も添えられていた。しかし、実際に米当局が潜伏先を発見したのは、書簡の配達人を追尾したことによるとされる。

 また、中東や北アフリカ各地のアルカイダ系組織が地元警察や軍を狙うことを批判。「地元の敵と戦うことで結果は得られない」と幹部への書簡で書いた。さらに、「イスラム国家の建設はタイミングが重要だ」とし、当面はアメリカ人への攻撃に集中するように求めていた。ただ、現実にはビンラディン容疑者の死後にアルカイダから派生した「イスラム国(IS)」が国家樹立を宣言し、勢力を伸ばしている。

 組織が捕らえた人質の交渉条件や殺害する場合などを細かく指示する書簡もある一方で、娘に宛てた手紙では「元気か。会えなくて非常に寂しい」といった父親の顔ものぞかせている。

 今回の資料とともに、ビンラディン容疑者が所有していた本のリストも公表された。国際情勢やアルカイダを分析した書物のほか、2001年の米同時多発テロに関してブッシュ政権による謀略論が書かれた本もあった。(ワシントン=杉山正)