イルカの入手方法を巡り、世界動物園水族館協会(WAZA、スイス)から除名を予告されていた日本動物園水族館協会(JAZA)は20日、世界協会への残留を決めたと発表した。会員施設に対して今後、和歌山県太地町の「追い込み漁」で捕獲されたイルカの購入を禁止する。繁殖への取り組みを進めるが難易度は高く、中長期的にイルカの確保や展示に影響が出る可能性がある。
世界協会は50カ国以上の団体が所属。追い込み漁で捕らえたイルカを飼育するのは倫理規範違反だとして、日本協会の会員資格を停止し、21日までに改善策をとらないと除名すると通告していた。除名されれば、動物園を含めて希少動物の繁殖などで海外から協力を得られなくなる恐れが出ていた。
日本協会によると、会員である国内の89動物園と63水族館で19日に投票を実施。20日に開票し、有効投票142票のうち、世界協会への残留希望が99票、離脱は43票だった。日本協会は同日、残留を要望する文書を送付。追い込み漁のイルカ購入はやめ、飼育下での繁殖促進で各水族館が協力することを決めた。
現在飼育しているイルカは問題とはされない。日本協会の荒井一利会長は20日夕に記者会見し、「追い込み漁や捕鯨文化を批判するわけではないが、世界協会の理解を得られなかった。これまでも繁殖を目指してきたが、努力が足りなかった」と話した。
今回の事態では鯨類を漁業の対象としてきた日本と、動物愛護を重視する欧米のあつれきが改めて浮き彫りになった。
水産庁で捕鯨分野を担当していた小松正之・アジア成長研究所客員主席研究員は「世界協会の対応は感情的」とする一方、「日本側も海外への基本的な説明や国内での議論が不十分な印象。関係者と地道にコミュニケーションを重ねることが大切だ」と指摘する。
イルカ、日本動物園水族館協会、世界動物園水族館協会、JAZA、荒井一利