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 22日に閉幕する核不拡散条約(NPT)再検討会議で、日本政府が提案した「世界の政治指導者らの被爆地・広島、長崎の訪問」の文言が、最終文書に盛り込まれない見通しになった。核保有国の中国がこの文言に強く反対しており、文書をとりまとめる国々は、全会一致の採択を原則とする最終文書にそぐわないと判断した。

 最終文書案は、とりまとめ役の国々が各国の意見を調整して練り上げる。賛否が分かれる文言を、だれもが受け入れられる文言に和らげたりして、改訂を重ねる。被爆地訪問の文言は、核軍縮に関する8日付の文書案に盛り込まれたが、中国が「日中間の歴史問題」を持ち出して問題視。とりまとめ役は「二国間の問題は盛り込まない」と判断し、12日付の文書案から削除した。

 日本政府は、開催地のニューヨーク・国連本部入りした杉山晋輔外務審議官が18日にも演説し、文言の復活を強く要請。しかし、核軍縮に関する文書案全体の調整が難航するなか、NPT議長国のアルジェリアなどは、文案調整のための非公式協議から、被爆地訪問の文言削除をめぐる議論を事実上、切り離した。文言復活には、日中の個別協議で妥協点を見つけた上で各国の了解を得るしかないが時間的にも非常に困難だ。

 杉山審議官は18日、「文言復活は至難の業」と記者団に語った。交渉関係者は「各国からは『もはや日中が外相レベルで交渉するしかない』との声が出ている」と明かした。(ニューヨーク=松尾一郎、金成隆一)