1月下旬に、東京国際フォーラム公演『Ernest in Love』が終幕しました。ご観劇いただいた皆様、ありがとうございました。
この公演は、全身を使ったり顔いっぱいで表現したりと、久しぶりに自由に動いていい作品でした。ワクワクするようなナンバーばかりで、オーバーチュアを聞きながらテンションが上がったりと出演者の私たちも一緒に楽しめましたし、結末もハッピーエンドで演じていて毎日幸せでした。公演中には、瀬奈じゅんさんら初演のキャストの方々や、樹里咲穂さんらかつての花組公演のメンバーも観に来てくださいました。とても緊張しましたし、足下にも及ばないことはわかっていたのですが、懐かしく観ていただくと同時に、私たちならではの❝味❞を感じていただけたらいいなと思って演じました。
千秋楽に向かうにつれて雰囲気も盛り上がり、アドリブもどんどん飛び出しました。私が一番印象的だったのは、キュウリサンド。キキちゃん(芹香斗亜)が舞台上で実際に食べるアイテムだったのですが、貸切公演や千秋楽では私もいただきました。第一ホテル東京さんが用意してくださっただけあり、パンもしっとりフワフワで、食べやすい一口サイズ。とっても美味しかったです! 実は、毎日食べるキキちゃんが飽きないようにと、キュウリにアボカドやアスパラ、キウイがプラスされていたりもしました。
貸切公演の日に、少しつまみ食いをするからキュウリサンドを一切れ追加して欲しいと、小道具さんに頼みました。そしたら、誰かのいたずらでしょうか、いつもの倍の量が用意されていました……。千秋楽では4倍で、お皿にてんこ盛り(笑)。食べ切らないと話が進まない設定だったので、2人でひたすら食べ続けて、指揮者の塩田先生にも食べていただいたり(笑)。食べる間、アドリブを入れながらどう間をもたせるか考えたり、どの辺りからどの台詞に入ろうとか、いつもより集中力が研ぎすまされていました。普段舞台上で何かを口にする機会はなく、『ME AND MY GIRL』の新人公演でブドウを食べたとき以来の貴重な体験でした。
ほかにも、ソファが勢いよく転がらないといけないシーンで転がらず、自分で持っていったりと(笑)、生の舞台ならではのことも多々ありました。お客様も、その日の出演者の空気やテンションを楽しんで笑ってくださったので、ありがたかったです。
まりあちゃん(花乃まりあ)も、グウェンドレンがトップ娘役としての初めての役で良かったのではないかと思います。お芝居をもっとこうしてみようという気持ちが出てきたり、デュエットでも日に日にしなやかになっていったりと、徐々にレベルアップしていくのを近くで感じていました。キキちゃんは、とても役に合っていて本人もやりやすかったのではないかなと思いました。アドリブをけしかけてくるくらい(笑)、生き生きとやっていたので、どう返そうかと考えたりして、そういう感覚も楽しかったです。
ただ、アドリブばかりが目立ってしまうと、いつもとは違うにぎやかなところだけに関心がいってしまい、台本に書かれていることを忠実に伝えられず、作品が浮ついてしまいます。初めてご覧になる方にもわかりやすく、台本の素晴らしさを素直にお伝えできるよう、私がしっかりやっていかないといけないという役目も感じました。それに、舞台上にいる時間もとても長かったので、盛り上がったところから登場し、そのテンションをいかにキープするかという難しさも実感しました。
『Ernest in Love』は以前から大好きな作品でしたので、1年のスタートを切るタイミングで上演できたこともうれしかったです。あのような色合いの作品、役のコンディションのもっていき方も学べたので、何かの引き出しにとっておきたいなと思います。
もう随分前になってしまいましたが、まだお伝えしていなかったので、宝塚歌劇100周年フィナーレイベント『タカラヅカスペシャル2014』の感想を少しお話しします。
今回、トップとして初めて「タカラヅカスペシャル」に出演させていただきました。毎年、何かと並行しながらお稽古するので慌ただしい印象がありましたが、改めて、トップさんはこんなにも大変だったのかと感じました。出番が多いこともありますし、組の顔として立たないといけない。花組代表として恥ずかしくないようにという責任を感じましたし、間違えたら「組子が恥をかいてしまう!」という意識が常にありました。これまでずっと自分の組のトップさんが銀橋に並んでいるのを後ろから拝見してきたので、自分がその立場として舞台に立っているのが、すごく不思議な感覚でした。
皆さんと隣に並んで歌っていて、轟悠さんの揺るがない存在感や研ぎすまされた集中力、「タカラヅカスペシャル」の出演が最後となるちえさん(柚希礼音)、退団されたりかさん(凰稀かなめ)、ちぎさん(早霧せいな)、それぞれ空気の動かし方や目線の配り方が違い、とても勉強になりました。稽古に臨む一切妥協しない熱い姿勢など、学ぶことが多かったです。ちぎさんもトップとして初めての出演で、段取りを一緒にチェックしたりと、運命共同体のように面倒を見てくださりうれしかったです。残念ながら、まさきさん(龍 真咲)さんら月組は東京宝塚劇場からの中継で直接の共演はありませんでした。でも月組から組み替えしたゆうみちゃん(咲妃みゆ)もトップ娘役として初出演で、懸命に頑張っている姿を見て、私も頑張ろうと感じました。
公演のパロディコーナーも、大体どの曲を使うという土台はあるのですが、台詞や細かい流れは毎年自分たちで考えます。今回も、朝早くに集合してみんなで話し合って作戦を練り、帽子を探す「不思議の国の謙信」を作りました。上杉謙信から瞬時にトートに変わって台詞を言ったりもしたのですが、この2役は同じ髪型や格好でも意外と違和感がなかったりと、やっていておもしろかったです(笑)。どの組も種類の違う笑いが起こっていましたし、メンバーのキャラクターが色濃く出た内容だったので、袖まで観に行っていました。最近組替えも多かったので、どこも新鮮な顔ぶれで活気にあふれていて、負けていられないなと思っていました。
そして、名曲の100曲メドレーも、聞いていてとても興味深かったです。私は、春日野八千代先生の『源氏物語』の楽曲「夕顔の歌」などを歌わせていただいたのですが、当時スターさんが歌われた音源を聞かせていただきながら稽古をしました。ですから、歴史の重みも強く感じましたし、歌わせていただける幸せを実感しました。そして、今度花組で『新源氏物語』を上演させていただくことになり、すごい巡り合わせだったなと振り返ってみて思います。
いま花組は、3月13日から行われる『カリスタの海に抱かれて』『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』のお稽古中です。トップに就任して初めてとなるオリジナルのお芝居とショーの2本立てで、組子一丸となって作品を作り上げている最中です。このメッセージが更新される頃には初日も間近。ぜひ、劇場に足をお運びいただければと思います。
※このメッセージは、2/19(木)に届いたものです。