甘すぎる成長予測に相変わらずの異次元緩和頼み。これでは信頼される財政健全化計画など不可能だ。緩みきった財政規律を正し、膨張する防衛費など不要不急な歳出の削減に全力を挙げるべきだ。
なぜ財政健全化計画をつくるのか、よく考え直した方がいいのではないか。消費税増税を先送りしたのを機に「放漫財政」が市場から狙い撃ちされ、国債暴落などが起きかねないとの危機意識からである。
こんな「ぬるま湯」のような計画づくりでは、気づいた時には取り返しの付かない「ゆでガエル」になっているのではないか。
六月までに政府がまとめる計画の焦点は、借金がこれ以上膨らまない「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」を二〇二〇年度までに達成できるかだ。信頼できる具体的な道筋を示す必要があるが、経済財政諮問会議で民間議員らが示す案は、あまりにご都合主義ではないか。
一つは、高すぎる経済成長率の設定。成長率が高ければ、税収が増えるためだ。しかし、日本経済の実力を示す潜在成長率は1%未満が一般的な見方なのに対し、計画は名目で3%程度、物価変動を除いた実質で2%程度を見込む。
さらに、その成長率が実現したとしても、内閣府の試算では二〇年度時点ではまだ九・四兆円程度の赤字が残る。そのため、民間議員はもう一段の経済成長を目指すというが、甘すぎるだろう。
もうひとつ、成長率が高まれば金利は上昇し、借金の利払い費がかさんで逆に財政は悪化するはずなのに、そうしたことは考慮していない。金利上昇を見込まないのは、日銀が異次元緩和を数年先まで続け、金利を人為的に抑え込むことを想定しているのだろうか。
だが、日銀は一六年度前半には2%の物価上昇目標を実現するとしており、その後は緩和政策の「出口」に向かうはずだ。それを遅らせればバブルを生みかねず、金融緩和頼みの財政運営など危険すぎるのである。
成長至上主義の安倍政権は財政を膨張させるばかりで歳出削減の努力は皆無である。安倍晋三首相は消費税の10%超への引き上げも封印するという。来夏の参院選対策との臆測も呼ぶが「歳出削減はほどほど」「消費税も打ち止め」と甘言ばかりでは、信頼できる計画とはなるまい。
墜落事故が続くオスプレイを自衛隊に十七機購入するより、徹底した歳出削減が先決のはずだ。
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