出身地や応援したい自治体に寄付すると、居住地の住民税などが減額される「ふるさと納税」制度の利用者が増えている。

 道内の市町村では寄付額が大きく伸び、住民税をしのぐ額を集めた自治体もある。

 寄付の返礼に贈られる地域の特産品に魅力を感じて「納税」している人が多い。そのため自治体の「返礼品競争」が過熱している。

 制度は特産品の販売を促すものではない。地方を支援するという本来の趣旨に沿ったあり方をあらためて考えたい。

 総務省によると、2013年の寄付額は前年比9%増の142億円となり、制度が創設された08年に比べ2倍近く増加している。

 政府は「地方創生」を後押しする一つの手段として、4月から制度を拡充した。寄付によって税金から控除される上限額を約2倍に引き上げ、確定申告の手続きも簡素化している。

 税金の一部が返礼品として戻ってくる「お得感」から、制度の利用はさらに広がるだろう。

 財政力が弱い自治体は返礼に経費をかけても収入を増やしたいと力を入れる。特産品のPRもできるのだから、なおさらである。

 北海道は食の宝庫だ。道内自治体の人気が高いのもうなずける。

 返礼品に最高ランクの和牛を用意する十勝管内上士幌町は14年度の寄付額が10億円に迫り、経費を除いた収入は3億円を超え、個人町民税を上回った。スクールバスの更新などに使ったという。

 このほか、日高管内えりも町や上川管内当麻町などは1億円を突破した。その努力は評価したい。

 ただ、返礼品を紹介するサイト「ふるさとチョイス」によると、品物をホームページに掲載する自治体は全国ですでに約1100にのぼり、品数も2万点を超えた。

 高額寄付者に対する返礼品には、丸ごと1頭分の牛肉や純金製の手裏剣というのもあった。度が過ぎてはいないだろうか。

 制度は都市部の税収を地方へ移転するものだ。早い話、自治体による限られた財源の奪い合いだ。

 東京のある区では制度によって13年度に1億円の税収減となり、3月に区議会で問題になった。

 人口減少と都市への人口集中はさらに進む見通しだ。都市と地方の税収格差は一段と拡大する。

 ふるさと納税は根本的な格差是正策ではない。改善には国から自治体へ税財源と権限を移譲する地方分権こそ重要だということを、政府は忘れてはならない。