このエントリーをはてなブックマークに追加

1 2 3 →

 本連載では、すでに5年を経過しようとしている日本のクラウド業界動向を、さくらインターネット研究所の独自調査に基づきご紹介します。今回は『いまさら聞けないクラウドのアレコレ(1)~地殻変動が起きつつあるクラウド業界~』として、私たちを取り巻くコンピューティング環境の変化と実際を見ていきましょう。

私たちを取り巻くサーバー環境

 それではまず、クラウドコンピューティングのIaaS(Infrastructure as a Service)の観点から私たちを取り巻くサーバー環境について見ていきましょう。図1は国内サーバー市場全体の年間出荷台数から我が国の中小企業・大企業で保有・稼働するすべてのサーバーの総数を概算・推定したものです。サーバー機材の減価償却期間を5年程度とし、やや乱暴に総数を求めているため正確性という意味ではあくまで概算ですが、私たちが使っているx86ベースのサーバーが、どれだけ国内で動いているかを想像するには十分な数値かと思います。

図1. 我が国の中小企業・大企業で保有・稼働するすべてのサーバーの考察(概算・推定)
図1. 我が国の中小企業・大企業で保有・稼働するすべてのサーバーの考察(概算・推定)

 国内サーバー市場全体の出荷動向(図2)からも分かる通り、その出荷量は過去5年に渡り横ばいとなっていますので、それほど外れた数値にはなっていないかと思います。機材や環境により、購入されたサーバーは3年から7年、場合によっては10年と継続して使われるケースもまれにありますが、CPU消費電力はそのままに2年半で性能が倍となるムーアの法則が継続して有効な私たちのコンピューティング環境では、3から5年で機材を入れ替えたほうが経済的といえます。

図2. 国内サーバー市場全体の出荷動向(2015年3月時点)
図2. 国内サーバー市場全体の出荷動向(2015年3月時点)

 日本国内において、海外勢の上陸によりパブリッククラウド市場の生成が始まった5年前を境として、私たちを取り巻くコンピューティング環境も大きく変化しました。VMM(Virtual Machie Manager)/Hypervisorによるサーバー仮想化導入が15年以上前から始まっており、プライベートクラウド、パブリッククラウド、サーバー仮想化、ベアメタルサーバーとコンピューティング環境の選択肢も多岐にわたっているのが現在の私たちを取り巻くサーバー環境なのです(図3)。

図3. さまざまな利用形態を経て企業活動に必要なシステム資源が提供される
図3. さまざまな利用形態を経て企業活動に必要なシステム資源が提供される

 「サーバー仮想化? そんなの使えるの?」という時代があり、「クラウド? そんなの使えるの?」という歴史を経て、現在私たちはどのようなコンピューティング環境で生活しているのか、さらにデータから紐解いていきましょう。


1 2 3
→

INDEX
いまさら聞けないクラウドのアレコレ(1) ~地殻変動が起きつつあるクラウド業界~
Page1
私たちを取り巻くサーバー環境
我が国におけるサーバーの利用動向
クラウド業界で起こる地殻変動
次回予告
こちらの関連記事もおすすめです

プロフィール

さくらインターネット株式会社
さくらインターネット研究所
上級研究員

 

1996年より特別第二種通信事業者のエンジニアとしてインターネット網整備に従事。その後システム・コンサルタント,ビジネス・コンサルタントを経て2010年より現職(2014年よりフリーランス契約)。

 

研究テーマはネットワーク仮想化など。3~5年先に必要とされる技術研究に取り組み、世の中に情報共有することを活動基本としている。

 

著書: オープンソース・ソフトウェアルータVyatta入門、Vyatta仮想ルータ活用ガイドなど多数。

 

仮想化インフラストラクチャ・オペレーターズグループ チェア
日本Vyattaユーザー会 運営委員
情報処理学会 インターネットと運用技術研究会 幹事
一般社団法人クラウド利用促進機構 総合アドバイザー


記事へのコメント・トラックバック機能は2011年6月に廃止させていただきました。記事に対する反響はTwitterやFacebook、ソーシャルブックマークサービスのコメントなどでぜひお寄せください。