夫の逮捕を受けて会見した樹木がこんなことを言っていたのが印象的だ。「被災地のすさまじい惨状を見て、内田という人間がおかしくならないわけがないな、とうすうす思っていた。被災地で抱えてきたものが抱えきれなくなって、一番に受け止めてくれる人を求めたのではないかと思う」

　復縁を求める行為は震災前からだが、震災を境に一気にエスカレートさせていった感がある。２０年にも及ぶ取材の中で数多く“喜怒哀楽”をあらわにする場面に遭遇したが、ここまでエキセントリックな行動に出た記憶はない。被災地から遠く離れた東京にも「３・１１」以来、涙もろくなったり、一人でいるのが怖くなったり……心を病んでしまった人は少なくないと聞く。内田容疑者も何かが壊れてしまったのか。

　東映名誉会長の岡田茂さんが亡くなった５月９日に電話で話した。映画の構想が持ち上がるたび“いの一番”に相談に出向いた先が岡田さんだった。「会うたび、あいさつ代わりにバカヤローと言われた。最後に会ったのは３年ほど前。『おまえ、すごいヘアスタイルしてるな』と言われたよ」