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【茨城】

少年院で経営者 支援のパス 就職先確保へラグビー交流試合

少年らにタグラグビーを指導する参加者(水府学院提供)

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 茨城町の少年院「水府学院」で今年から、入院少年と企業経営者らのタグラグビーの交流試合が始まった。犯歴などを理解した上で、出院した少年らを雇う「協力雇用主」になってもらい、就職先確保につなげる目的。法務省少年矯正課は「協力雇用主を増やす目的のスポーツ交流は聞いたことがない」としている。 (宮本隆康)

 水府学院に入るのは、十五〜十七歳の約六十人。元ラグビー日本代表の故石塚武生さんらが二〇〇七年から年二回ほど、少年たちの指導を始め、元慶応大監督の上田昭夫さん(62)らが受け継いでいる。協力する県ラグビー協会が昨年、「少年院と社会をつなぐ機会を」と交流試合を発案した。

 県協会に依頼され、水戸市で行政書士事務所を経営する橋本哲さん(47)が、市内のロータリークラブのラグビー経験者ら約十人に参加を呼びかけた。

 尻込みする人や、直前にキャンセルする人もいたが、自動車整備や精密機械製造、不動産業などの企業経営者五人が集まった。

 交流試合は二月、学院の体育館であり、ラグビー協会員や企業経営者ら約二十人と、少年約六十人が一緒に汗を流した。試合中に言葉を交わすことはあったが、ゆっくり会話をする時間は設けられなかった。それでも、握手を交わし、企業経営者らに見送られて体育館を出る時、目を潤ませる少年もいたという。

 後日、少年たちが参加者にあてた手紙には「見守ってくれる人を二度と裏切ってはいけない。涙が出そうになるぐらい心が痛くなりました」「ここを出ても非行少年と言われるかもしれませんが、支えてくれる方々がいると思うと孤独も感じません」と、感謝の言葉がつづられていた。

 仲立ちをした橋本さんは「先入観で不安だったが、普通の子どもと変わらない顔つきで驚いた。法に触れたのは、環境が原因だったのかと思った」と振り返る。「トライを決めて、はにかんだ笑顔が、社会に出てからも見られるようにしたい。交流試合を続ければ、遠くない将来、雇用する企業が出るのでは」と期待する。

 水府学院では、六月にも第二回を計画中。県協会の小沼公道副理事長(56)は「参加してくれた経営者は五人しかいないのが、今の現実」とするが、その反応には手応えを感じている。「モデルとして全国に広がってほしい。美談じゃない。やらなきゃいけないことだと思っている」と話した。

 

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