あるお寺の和尚さんが熱を出してふせっておりそこへ村のお医者さんが往診に来た。
2〜3日は床で休むことですな。
さようか。
ところでてんしきはありましたかな?てんしき?さよう。
てんしきはありますかな?てんしき?てんしきがないようですと…。
あありますあります。
ただちょっとすぐには…。
さようでしょうなぁ。
次にはきっと用意いたしておきましょう。
は?珍念先生がお帰りだ。
(珍念)は〜い。
お大事に。
てんしき?はて?何のことやら。
知らぬとは言えぬ見栄っぱりの和尚さん。
聞かずにわかる術はないかと考えた。
そこへ珍念が戻ってきた。
和尚さん先生をお送りしてまいりました。
あぁご苦労だったな。
はっ!失礼いたします。
珍念ちょっと待ちなさい。
お前はてんしきとは何か知っておるか?てんしき?さようてんしきじゃ。
いいえ存じません。
そうか。
何なんですか?あ〜わしはもちろん知っておる。
だがここで教えてはお前のためにはならぬ。
はぁ…。
これも修行じゃ。
村へ行っててんしきを借りてまいれ。
ははい。
あ医者のところはいかんぞ。
あそこにはないらしいからな。
わかりました。
てんしきてんしきてんしきねぇ。
庄屋様に聞いてみるか。
てんしき?はいお借りできますか?あ〜それがなさよう人に貸してしもうてな今はないのじゃ。
そうですか。
ご隠居さんはご存じかのぉ。
て〜ん〜し〜き〜?はい。
ん〜実は大掃除の時に割ってしもうてな。
はぁ〜貸したり割れたりするもの?あ!寺子屋の師匠ならきっと知っとるじゃろ。
あぁ…てんしきなら味噌汁の具にして食べてしもうた。
はぁ?すまんが忙しいでなよそをあたってくれ。
《貸したり割れたり食べちゃったりって何だろう?》珍念さん聞いて回ってもどうもわからない。
いくら考えてもわからない。
(2人)エッサホイサエッサホイサエッサホイサ…。
いったいてんしきって何なんだよ!
(2人)ホイサエッサ…。
おや珍念さん。
今「てんしきって何だ?」って言ったのはそなたか?ははい。
ならば教えてしんぜよう。
お願いします!てんしきとは気をまろばし失うと書く。
屁のことじゃ。
へ?さよう屁。
おなら?んおならのことじゃ。
それはそうと明日寺に伺うのでな和尚にそう伝えなさい。
行ってくれ。
(2人)ヘイ!エッサホイサエッサホイサ…。
おなら貸した?食べちゃった?みんな知らないんだな。
ってことは和尚さんも。
ならば簡単に教えたんでは和尚様のためにはならないな。
ここはひとつ…。
ただいま戻りました。
わかったか?はいてんしきとは盃のことでございます。
盃?「てん」に「くち」で呑む。
「しゅ」が酒「き」が器。
てんしゅきがてんしきと言いかわったか。
なるほど。
あ〜いやよくわかったな。
ありがとうございます。
明日先生がいらっしゃいます。
ん…ではてんしきを用意しておくように。
はい。
そして次の日。
おかげんがよろしいようでございますな。
はいずいぶんと楽になりました。
それは結構。
てんしきもございました。
ほほうてんしきがありましたか。
ただいまお見せいたしまする。
はぁ?珍念や。
(珍念)は〜い。
三つ組みの箱入りでございます。
三つ組み?ただいまお見せしましょう。
においますかな?いやいや。
珍念に毎日みがかせております。
みがく?代々の家宝でございます。
家宝?これが我が寺のてんしきでございます。
ククク…。
これは盃でござろう。
え?ククク…。
てんしきではございませんな。
さては珍念!
(おなら)おっ!てんしきでございます。
珍念さんようお習いになった。
へへっ!何じゃ?
(おなら)和尚それぞてんしき。
ククク…ハハハハハ!てんしきとは屁のことだったのか。
う〜ん…。
わしを騙しおったな!恥を知れ!私へとも思っておりません。
お後がよろしいようで。
昔むかしあるところに花を売って暮らす貧しい男がいました。
男は毎日まいにち川を渡り川向こうの町へ花を売りに出かけていました。
そして日暮れになると売れ残った花を川に流していました。
捨てちまうのか?いやなにそうじゃねえんだ。
男はたとえ花が売れなくてもその日一日をつつがなく過ごせたことに感謝して川の神様に花を捧げていました。
ある日のこといつものように町で花を売り川まで戻ってくると大水が出て渡れなくなっていました。
う〜んこりゃ困ったなぁ。
これじゃあ家に帰れんぞ。
どうしたものかと考えていると川の中から大きなカメがひょっこりと現れた。
ん?お迎えに上がりました。
どうぞこの上に乗ってください。
どこへ行くんじゃ?乙姫様の御殿じゃ。
乙姫様の?そうじゃ。
お前様がいつも乙姫様に花をくれるのでぜひお礼をしたいとお呼び申したのじゃ。
そうか。
本当に乙姫様に会えるのだろうか?そう思っているうちに霧に包まれてしまいました。
霧が晴れるとそこはどことも知れない乙姫様の御殿だったのです。
男は案内されて奥の間に通されました。
するとそこにはそれは美しい乙姫様の姿がありました。
いつも花をくれるのはお前様か。
ありがたいことじゃ。
へへえ…こちらこそお招きいただいて。
花のお礼に男の子を1人やろう。
はぁ〜。
この子はハナは出ているしヨダレも垂れている。
でもこの子を大事にすれば何でも願いを叶えてくれよう。
お前様の子にするがよい。
へぇ…でその子の名は何というのでございますか?名はとほう。
とほう?それで男はとほうを連れて帰ることになりました。
とほうハナをかんだらどうだ。
(とほう)とてもかまれねえ。
ヨダレはどうだ?とっても拭けねえ。
着物はどうだ?これ替えることもできねえ。
そうかしようがねえな。
じゃ飯でも食うか。
《汚いうえにガツガツとよく食うなぁ。
こいつと一緒に暮らすのか》男は乙姫様の言葉を思い出しました。
《そういえば何でも願いを叶えるとか言ってたな》お前と暮らすにはこの家はちと狭い。
何とかならんか?あいよ。
あ〜!こりゃいい。
しかしこげな立派な家にこげな着物ではよう住まれん。
新しい着物を出してくれぬか?あいよ。
お〜これは上等な着物じゃ。
とほうオラは銭がないのじゃ銭は出せるか?どれくらい出そう?そうさな千両も出してもらおうか。
お安い御用じゃ。
うわっ!せせ千両じゃ千両じゃ!ワハハハ。
それっきり男は花売りをやめてしまいました。
《楽して儲かる商売はないかのう》そうだ金貸しがいい!男は千両のカネを元手に金貸しを始めました。
するとこれが大当たり。
男はあっという間に大金持ちの旦那様になりました。
それから3年経ちました。
男はつきあいも広くなりあっちの旦那やこっちの旦那といろんなところでもてなしを受けました。
ところがどこへ行くにもとほうが一緒についてきます。
男は汚いとほうがいつもそばにいるので恥ずかしくてしようがありません。
とほうたまにはハナくらいかんだらどうだ?とてもかまれねえ。
ヨダレだけでも。
とても拭けねえ。
じゃあ着物だけでも替えたらどうじゃ。
ええ着物買うてやるから。
これ替えることもできねえ。
男はほとほと困ってしまいました。
とほうのおかげでここまでになったがいつも一緒では商いにも差し支えがある。
嫁をもらうにもこの汚らしい子供は邪魔になっていました。
そこで男はしようがなしに。
だいぶお前の世話になったが都合によってお前に暇をやる。
もう帰ってくれぬか。
そうかそれならしかたねえ。
はぁ…。
するとたちまち貧しい元の生活に戻ってしまいました。
男はすっかり途方にくれてしまいました。
またとほうに会えたらと毎日まいにち花売りに出かけ帰りには必ず川に花を流すのでした。
とほう会いてえ!とても会えねえ。
昔岩手の遠野地方にある小国村というところに貧しい夫婦が住んでいました。
あんた弁当だよ。
ああ。
2人はとても仲むつまじく暮らしていました。
ある春の日のことです。
おかみさんがふきのとうを採りに山へ入っていきました。
あら今日はさっぱり採れないわね。
もっとあっちのほうへ行ってみましょうかね。
おかみさんはずんずん山奥へと入っていきました。
あらここはどこかしら?おかみさんはすっかり道に迷ってしまいました。
誰かいませんか?はぁ…。
しばらく行くと木々の間から光のさす場所を見つけました。
あっ!そこには山奥にあるとは思えない大きな屋敷がありました。
なんとまぁ山奥にこんな立派な屋敷があるなんて。
誰かに里までの道を教えてもらいましょう。
どなたかいませんか?誰もいないのかね。
持ってけ持ってけ。
はてどこから?誰かいるのかしら?ごめんください。
おかみさんはとうとう屋敷の中へ入っていきました。
おかしいわね確かに声がしたと思ったんだけど。
持ってけ持ってけ…。
これはなに?声はするのに誰もいない。
持ってけ持ってけ…。
持ってけ持ってけ!ひぃっ!持ってけ持ってけ…。
持ってけ持ってけ…。
持ってけ持ってけ持ってけ。
いらんいらん何もいらん!おかみさんは怖くなって慌てて屋敷を逃げ出しました。
後ろを振り返らず一目散に走りました。
おかみさんはどこをどう走ってきたかわかりませんがやっと家にたどり着くことができました。
それで持ってけ持ってけって声がするんだよ。
私もう怖くなって。
ハハハハハお前それタヌキに化かされたんじゃないか?そんな山奥に屋敷があるなんて聞いたこともねえ。
亭主にそう言われおかみさんもタヌキの仕業と思うことにしました。
それからしばらく経ったある日。
おかみさんが川で洗濯をしているときのことです。
あら?まぁきれいなお椀だこと。
おかみさんはそのお椀を家に持ち帰りました。
しかし川から流れてきたお椀を食事に使ってよいものかわからずお米を量るのに使うことにしました。
それからまたしばらくしたある日のこと。
すぐご飯にしますからね。
あら?そういえばお米が全然なくならない気がするわね。
ねぇあんたお米はいつ買ったか覚えてます?さていつだったかな。
このところ食べても食べてもお米が減ってない気がするんですよ。
そういえばそうだな。
このことはあっという間に村中に広まり聞きつけた長老が夫婦の家にやってきました。
このお椀はどうしたんじゃ?おかみさんは川で拾ったことを長老に話しました。
お前さんその前に山で大きな屋敷を見なかったか?はい山奥に大きな屋敷がありました。
それで恐るおそる屋敷に入っていったんです。
持ってけ持ってけ…。
あっ!広い座敷には黒いお膳に赤いお椀美しい壺がありました。
そうだ思い出しました!お椀の1つが跳んできたんです私だんだん恐ろしくなって…。
いらんいらん何もいらん!あっこのお椀その屋敷に置いてあったお椀にそっくりだわ。
それはきっとマヨイガじゃ。
マヨイガ。
マヨイガとは迷う家という意味でな。
その家に入った者は家の中のものを何でもいいので1つ持っていってよいと言われているんじゃ。
はぁでも人様の家のものを勝手に持ってくるなんて。
マヨイガが授けたいと思う人間だけが出会えるんじゃ。
しかしお前さんが無欲なもんじゃからどうしてももらってもらおうと川を流れてやってきたんじゃな。
はあ。
不思議なこともあるもんじゃ。
あんた弁当だよ。
ああ。
(2人)いただきます。
それからもお米は決してなくなることはありませんでした。
貧しくも仲むつまじい夫婦にマヨイガの幸が訪れたのです。
2015/05/17(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「転失気(てんしき)」
「鼻たれ小僧」
「マヨイガ」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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