スマホで水田管理:農業にICT活用 新潟市
毎日新聞 2015年05月17日 12時51分
新潟市とNTTドコモ(東京都千代田区)、農業ベンチャー2社は14日、稲作農業にICT(情報通信技術)を活用する実証実験を開始し、協定を結んだ。一般に水田は分散していることが多く、特に水の管理は現地までの移動時間を含め労働時間の25%を占めるといわれている。ICTの活用により、現地に行かなくてもスマートフォンで水温を確認したり、生育記録などのデータを翌年以降の生産に生かしたりできるようになり、負担軽減や生産性の向上が期待される。【米江貴史】
ほかに協定を結んだのはベジタリア(同渋谷区)とウォーターセル(新潟市中央区)。実証実験では、ベ社が開発したセンサーを水田に設置し、水位や水温、日射量などを計測。データはドコモのネットワークを活用してクラウドサーバーに蓄積される。農家はスマホやタブレット端末などの専用アプリを通じてチェックできるほか、天気予報や病害虫注意報などの配信も受けられる。
また農家は端末から、農業日誌に当たるアプリ「アグリノート」(ウ社開発)に生育や肥料の投入量などを記録し、検索サイトの地図や航空写真を登録しておけば、水田ごとに管理状況が一目で分かるようになる。記録は、収穫量や品質と合わせて検証することで、翌年以降の生産性向上にも役立つ。これまで勘や経験に頼りがちだった米作りに、数値化や視覚化を持ち込むことで経営の安定も期待できるという。
今回の実証実験の対象は、市内で稲作農業を行う13団体と個人の農家9軒。総面積約460ヘクタールの水田に約300個のセンサーを設置する。来年3月までの予定で、予算総額は約4000万円。ほぼ全額をドコモが負担する。ベ社は来春をめどに全国向けのシステムの展開を目指すという。
会見したドコモの加藤薫社長は「ICTを活用した農業は日本ではまだ普及しておらず限定的だ。効率化で国際競争力強化の余地がある」と話した。篠田昭市長は「農業特区となった新潟市に着目してもらい、発信力の高いところで始まったと思う。大規模農業の変革拠点となれば」と期待感を示した。