馴染みのドトールにある日、閉店の告知。
数ヵ月後にはすっかり別人。オシャレなカフェに変身。
私は誘う。
昔ドトールだったカフェに行こうと。
ここにカウンターがあった、あのテーブルは変わっていない。
君は怒る。
昔ドトールだったことは忘れろと。
それはご法度、今はもう黒歴史だと。
心は叫ぶ。
みな↑ さーん↓ 聞いてくだ↑ さーい↓ ここはむかしー↓ ドトールでしたー↓
まるで小学生のように。
色黒の店員が帰り際、チケットを差し出し微笑む。
「よろしければ次回、お使いください」
おお、ジーザスクライスト。ここはすっかりドトールじゃない。
私は生き証人。だから忘れない。あなたが昔、ドトールだったこと。
行きつけのドトールがまた、生まれ変わった。
数ヵ月後にはシックなバーに。昔はドトールだったのに。
私は請う。
昔ドトールだったバーに連れてってと。
ここは確かにドトールだった。こんな時間には閉まっていた。
思い出がよぎる。
ドトールだった頃、ここであの子と語った。
あの頃は若かった。
君は言う。
おまえが行きたがる店、ぜんぶ昔ドトールだよな。
おまえが行きたがる店、ぜんぶ昔ドトールだよな。
まるでふかわりょうのように。
黒服のバーテンがワイングラスを差し出し囁く。
「昔、ドトールだった頃をご存知で?」
ああ、消されるのだろうか。アポトキシンでも入っているのだろうか。
私は生き証人。でも大丈夫。昔ドトールだったのはあなただけじゃない。
みんな、昔はドトールだった。