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社説

「大阪都」否決 議論の重さ忘れるな

 民意は、議論を尽くさぬままの制度改革を認めなかった、ということだろう。大阪市の将来の姿を決める住民投票は、市を廃止して五つの特別区に再編する「大阪都構想」を反対多数で退けた。

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が掲げた大阪都構想は、市と大阪府が競い合って大規模開発や病院運営などを手掛ける二重行政の解消を狙ったものだった。維新の会は、広域行政を府に一元化することで大きな財政効果が期待できる、と主張してきた。

 府市両議会で野党の自民、民主、公明、共産は都構想反対で足並みをそろえ、「市を廃止しなくても二重行政は解消できる」「財政効果は小さく、サービスの水準も低下する」と主張してきた。

 さて、どちらの主張に理があるのか。市民は難しい選択を迫られたわけである。

 道府県内にありながら道府県並みの権限を持つ政令指定都市をめぐっては、古くから二重行政の問題が指摘されてきた。大阪以外にも、二重行政解消を掲げた構想が各地で浮上してきた。

 大村秀章愛知県知事と河村たかし名古屋市長は、愛知・名古屋の合体をうたう「中京都構想」を二〇一一年の知事・市長ダブル選で共同公約に掲げた。

 横浜市は、逆に、神奈川県から事実上、独立する「特別自治市」構想を唱える。

 新潟では、泉田裕彦知事と篠田昭市長が県・市合併を視野に入れた「新潟州構想」を提唱した。

 その先陣を切って、制度変更の可否を決める住民投票にまで構想を進めたのは、ひとえに橋下氏の豪腕による。

 商都と呼ばれた大阪の地盤沈下は指摘されて久しい。沈滞する大都市に、持続可能な将来像をいかに描くのか。その論点は地方自治の最重要課題であり、改革の具体的道筋を示した橋下氏の問題提起には大きな意味があろう。

 しかし、議会では、異論に耳を傾けぬ市長と野党四党との間で議論が深まることはなく、法定協議会では最終的に大阪維新の会だけで協定書を決定。住民投票実施が決まったのも、政党間の駆け引きの結果でしかない。

 議会を軽視して強引に住民投票に持ち込み、「納税者をナメた役所や議会をつぶす」「既得権益を全部壊す」などとあおって主張を押し通そうとした手法は、あまりにも危うい。

 議論尽くさぬ改革は認めず。それが、示された民意であろう。

 

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