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藤元 正

藤元 正
05月17日
最近の物理学研究は実験装置が巨大化するばかりでなく、関わる人数もケタ違いに多い。それだけ人のマネージメントが大変になるわけだが、CERNでインターネットの根幹をなすWWW(ワールドワイドウェブ)が生み出されたように、関係者をうまくマネージメントするCERNならではの手法が、もしかすると、ほかの研究プロジェクトやビジネスなどの場に役立てられるかもしれない。

世界最多、科学者5000人が関わった論文公開

「ヒッグス粒子」関連、人名だけで24ページも

 研究に関わった5000人を超える科学者の名前を記した物理学の研究論文がネット上に公開された。実際の人数は5154人で、1本の論文に掲載された人名としては世界最多。とはいえ、「ヒッグス粒子」関連の大マジメな内容で、米物理学会誌「フィジカル・レビュー・レターズ」の電子版に5月14日に掲載された。せいぜい3000人台だった最多記録をゆうゆう更新したという。ネイチャー誌がニュースとして伝えた。

 スイス・ジュネーブ近郊にある欧州原子核研究機構(CERN=セルン)が建設した世界最大の衝突型円型加速器「LHC」。公表された論文は、ここで素粒子実験を行うATLAS、CMSという二つの国際研究チームが、ヒッグス粒子の高精度な質量推定についての成果を共同でまとめたもの。ただ、全33ページのうち、本文は9ページ。残り24ページが科学者およびその所属機関のリストにあてられている。フィジカル・レビュー・レターズの編集者によれば、これから出版される印刷版でも関係者名をすべて掲載するという。

 ヒッグス粒子は2013年のノーベル物理学賞の対象テーマとして記憶に新しい。実はその年のノーベル賞が発表される前のこと、もしヒッグス粒子がノーベル賞の対象になるとしたら、実験を通して発見に貢献した何千人ものCERNの研究者のうち誰が受賞するのか、とちょっとした話題になっていた。ノーベル賞は平和賞を除き、グループでの受賞を認めていないためだ。

 結局は、英国のピーター・ヒッグス博士(エディンバラ大学名誉教授)をはじめ、ヒッグス粒子関連の理論を提唱したうちの3人に賞が授与されることになったが、受賞理由には選考委員会の配慮の跡も。「CERNによって存在が確認された素粒子(ヒッグス粒子)に基づく、質量の起源を説明するメカニズムの理論的発見」と、CERNの研究者に敬意を表わす言い回しとなっている。

ニュースイッチオリジナル
フィジカル・レビュー・レターズ

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