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2015/05/18new

住民投票の覚書

Tweet ThisSend to Facebook | by 旅人

 藤井聡先生の学者106人衆に加えてもらったが、もちろん藤井先生のまちづくりの
考え方に全面的に賛成してきたわけでもなく、只々橋下維新の構想が実現すると、地域
が持たなくなると思ったので、私も事前に藤井先生の呼びかけに応じて意見を寄せた。

http://gendai.ismedia.jp/preview/dbc0bbd6f39b148ab4f00aeb6ac0e3c08b3ca659?page=4

 東京の知人からは、投票結果が意外であるという話を聞いたが、まさに大阪市民である
私としては、友人知人の誤解を解くために若干の覚書を残しておきたい。ちなみに、橋下
市長が少年時代を過ごした割と近くに住んでいるが、たまたま大阪の大学に働いているの
で便利なここを選んだだけで、生粋の大阪人というわけでは全くない。

 

 話は10年ほど前まで遡るが、当時、大阪市長は関淳一さんという方が就いていて、
今後の大阪市のあり方を検討していた。関市長は改革にかなり熱心で、職員の厚遇
問題等の是正にも取り組んでいた。慶応の上山先生は、橋下市長が連れてきたと思わ
れがちであるが、実はこの頃から大阪に関わっている。関市長の展望は、人口減少下
の社会において、今後、爆発的発展も望めないであろうから、小さくてもキラリと光
る価値のある街として“創造都市”の考え方に基づいて大阪のまちづくりをしていこう
というものであった。この創造都市論の考え方に従って、大阪市立大学に創造都市研
究科が設置された。この創設メンバーには、私と同門の情報学者が入っており、彼と
その他の市大創造都市の先生方とで、大阪市の安全安心を体系的に考える講座を設計
することになったので、この経緯はかなり詳しく知っているつもりである。

※URLはその時作った本
http://www.amazon.co.jp/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AE%89%E5%85%A8%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E2%80%95%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%80%81%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%80%81%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%8A%80%E8%A1%93-%E4%B8%AD%E9%87%8E-%E6%BD%94-%E7%B7%A8%E8%91%97/dp/4501622105



 関市長の改革はかなりドラスティックで、これが職員の反発を生んだ。任期の途中で出
直し信任市長選挙を彼もやっており、信任選挙は橋下市長のパフォーマンスが初めてとい
うわけではない。出直し選挙は制したものの、次の市長選挙では、労組や民主党系が担ぎ
だした平松さんに負けることとなる。

 平松さんは、実は戦後の大阪市長で初めて、助役経験の無い首長で、私の目からは支持
母体に上手く絡み取られてしまったような気がしてならない。関市長の改革路線もストッ
プしてしまった。

 そして、その4年後に橋下さんが都構想と改革を掲げて市長に当選した。

 

 私個人は、政策内容だけでなく、手続き的正当性にも重きをおく考え方なので、かなり
初期の段階から大阪維新の会に懐疑的であった。
市長選挙直前に、大阪市立大学大学院創造都市研究科の同窓会から、上山先生と対談して
ほしいと言われ引き受けることにしたが、「何で私に?」と卒業生に聞いてみたところ市
大内部の専任教員に頼んでも誰もでてくれなかったそうである。地元公立大の教員こそが
都構想の問題点を知っていたと思うので、これはちょっと残念であった。
http://researchmap.jp/joc4qqejt-34589/#_34589


 

 私は先述の創造都市を目指す経緯を聞いていたので、どう頑張っても大阪に新しい財源
が生まれる目処も無いことがそれなりに分かっており、何で維新の皆さんはあんなに自信
たっぷりなのか不思議に思っていた。橋下市長の経済政策がほとんど無策であることは、
複数の指摘があるが、そもそも大阪に金のなる木は存在しないのである。

 
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150515-00015233-president-bus_all&p=1


 

 

 今回の投票結果に、東京の知人の中には「大阪は発展を諦めるのか」と述べたケースも
あったが、我々地元民はこの
3年半のドタバタを間近で見てきた。公募区長の失態、民間
人校長の不祥事、食えない給食に関するトラブルなど、東京ではあまり報道されないが、
地元ではこの市政ではやっていけないということが分かり始めていた。

 
http://www.j-cast.com/2015/03/02229222.html
http://www.asahi.com/articles/ASG7042Z5G70PTIL00P.html

 

 

 特に、地域と密着な関係をもつ女性の心配と反発は大きく、3年前反都構想で登壇した
私は、地元で割と冷ややかな対応を取られたが、今回の
106人の学者声明については、そ
のようなこともなくスルーされたという感じである。

 http://www.sankei.com/west/news/150511/wst1505110012-n1.html

 また、まちづくりを支える大きな角の一つは実は高齢者で、この人たちがいないと夏祭
りや集団登校の運営が出来ない。高齢者は単なる既得権益層ではなく、実際に地域を運営
している人たちである。橋下市長はここを敵対視したため、メディアや
ITを駆使した空中
戦による政治活動を中心にせざるを得なかった。

 
参考
http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1429237789/

 

 道州制云々以前に、給食や夏祭りを上手くこなせない市長に、先の舵取りは任せられな
いというのが反対派の民意ではないかと思う。

 http://www.sankei.com/west/news/150511/wst1505110012-n1.html

 今回の投票でも、有力な支持層は2050代の男性といういわゆる男性サラリーマン層で
あり、地域との関わりが相対的に薄い人たちであったことがわかる。この方たちは、橋下
市長のリーダーシップにかけたのであろう。会社であれば、民主的手続きよりも、スピー
ド感を持って改革してくれるトップのほうが望ましいのは当然である。

 

 1年前から大阪の自民党は、住民投票自体を避けようとしていたが、これはまちづくり
の観点からは正しい選択である。私の場合、保徳戦争のあった奄美大島、基地の受け入れ
で割れた三宅島、所属組合によって住民同士が口を利かなかった荒尾・大牟田など、シン
グルイシューで地域が分断された例を山と見てきているので、地域政治の根幹は対立を減
らすことだと考えている。橋下市長のやったことは地域政治がやるべきことの逆を行って
しまった。

 今の大阪は、住民同士が敵味方に別れ、いがみ合うことになってしまい、街自体が大き
く傷ついている。もやい直し(人間関係の修復)には、かなり時間がかかるだろう。

 そして、あの問題の大きかった市役所も、今回の反対結果を受けて、改革が後戻りする
かもしれない。

 

 結局何をやってきたのかわからない5年間になってしまったが、そのコストは彼を3
半前に選んだ大阪市民が負うことになる。

 都構想を唱えず、府と市で調整をして丁寧に政治をやったとしても、大阪が劇的な成功
をおさめることも無かったはずで、地方都市の首長はいまや悩みの中でしか行きていけな
いと思う。政治は本来地味で泥臭いものだったので、この
5年がやはりおかしかったので
はないかと。


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