【ワシントン聯合ニュース】韓国政府と米国系プライベートエクイティ(PE)投資会社ローンスターの投資家・国家間紛争(ISD)条項に基づく訴訟が15日(米東部時間)、米ワシントンの国際投資紛争解決センター(ICSID)で1回目の審理を迎える。韓国政府が外国投資家と争う事実上初のISDである上、多大な税金にもかかわる案件で、結果次第では波紋が広がることも予想される。
ICSIDは世界銀行傘下の組織で、国際投資紛争の調停と仲裁を担う。今回の訴訟はローンスターが韓国政府を相手取り、韓国外換銀行の売却の遅れと不合理な課税で46億7900万ドル(約5577億円)相当の損害を被ったとし、2012年11月にICSIDに仲裁を申し立てたことに端を発した。
1回目の審理は双方当事者と代理人が出席し、非公開で行われる。韓国政府は事案の重要性を踏まえ、関係官庁の実務者からなる対応チームも現地に派遣した。
まずは訴訟の成立にかかわる管轄権問題が取り上げられるもようだ。ローンスターはベルギーに設立したペーパーカンパニーの子会社を通じ、外換銀行やソウル・江南の大型ビルなどに投資した。これらの投資行為は韓国とベルギー・ルクセンブルク間の投資協定(BIT)の保護を受けるべきだと主張している。これに対し韓国政府は、実体のない子会社のため保護対象にはならないとの立場だ。
ローンスターはまた、韓国国税庁から課された8000億ウォン(約867億円)台の税金を不当と主張する。韓国政府はローンスターの子会社を租税回避目的で設立したトンネル会社と見なし、投資協定には該当せず課税は当然だと反論している。
最大の争点は外換銀行の売却承認問題だ。ローンスターは2003年10月に1兆3834億ウォンで外換銀行を買収、2006年から売却に動き出したが交渉がまとまらなかった。結局、2012年にハナ金融持ち株会社に3兆9157億ウォンで売却し、多額の利ざやを得た。
しかしローンスターは、2007年に英金融大手HSBCに外換銀行株51%を売却する契約を交わしたにもかかわらず、韓国政府が売却承認を遅らせたために白紙になったとし、損害賠償の責任を韓国政府が負うべきだと主張している。韓国政府は当時、ローンスターが外換銀行を格安で買収した疑惑をめぐる背任事件と、外換銀行と外換カードの合併に絡む株価操作事件などがあり、すぐに売却を承認する状況ではなかったとする。
10日間にわたる1回目の審理に続き、6月29日から2回目の審理が予定されている。当事者が和解しなければ、最終的な判断が示されるまで1年以上を要するとみられる。