BRICS:「新開発銀行」準備が加速 年末にも業務開始
1日前
【北京・井出晋平】新興5カ国(BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が共同で設立した国際金融機関「新開発銀行」が、業務開始に向けて準備作業を加速させている。年末か来年初めの業務開始が決まったほか、総裁らトップ人事も固まりつつある。ギリシャなど他国の参加も呼び掛けており、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)とともに、日米など先進国主導の国際金融秩序に対抗する姿勢を鮮明にしている。
「早く業務を開始することで、世界経済のガバナンス(統治)改革に新たな活力を注入する」。中国財政省は15日に発表した声明で、新開発銀が今年末か来年初めに業務を開始する方針を明らかにした。今月11日には、初代総裁にインドの大手銀会長、K・V・カマト氏が内定。インド以外の4カ国から1人ずつ選出する副総裁には、中国財政省出身で世界銀行副総裁の祝憲氏らが就任することも内定した。各国財務相で構成する「総務会」、各国の理事で構成する「理事会」を設立して、それぞれの議長に露とブラジルが就くことも決めた。中国の金融センター、上海・浦東地区に準備事務局を開設。将来的には同地区に本部ビルを建設する計画だ。
また、今月中旬には、今年のBRICS議長国であるロシアが、債務危機にあえぐギリシャに参加を提案したことが明らかになった。露メディアによると、ギリシャのチプラス首相は「予想外のうれしい提案」と関心を示したという。ギリシャは、露にとって地中海の出口に位置する重要な地域。中央アジアや欧州をつなぐシルクロード経済圏構想を掲げる中国も、欧州への窓口として重視している。ギリシャが金融支援を巡り欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)と対立するのに乗じて、新開発銀をテコに関係強化を図る狙いがありそうだ。新開発銀は「国連加盟国は参加資格がある」(中国財政省)としており、今後も他国に参加を呼び掛ける方針だ。
新開発銀は2012年、インド・ニューデリーで開かれたBRICS首脳会議で設立が提案された。世銀やIMFなど既存の国際金融機関で、新興国の発言権が高まらないことへの不満が背景にある。中国が主導するAIIBにも、BRICS各国がそろって参加。いずれも新興国にインフラ建設資金の融資などを進める。BRICS各国は、二つの金融機関を通じて既存の国際金融秩序に揺さぶりをかける構えだ。
だが、新開発銀もAIIBと同様、融資基準などが不明確で、環境破壊などにつながる事業に手を貸す懸念も拭えていない。役割も重複しており「事業のすみ分けを明確にする必要がある」(国際金融関係者)との指摘も出ている。