経済発展に伴って地球上で存在感を増している中国だが、本当に世界のリーダーになれるのか――に世界の注目は集まっている。しかし、リーダーの資質として致命的な欠点が実はここにあるような気がしてならない。
さて、ドイツに伝わってマイセン陶器として発展する有田焼は、ドイツに真似された一方でありがたいお土産をもらうことになる。これについても伊東先生が書いている(「ドイツが有名にした世界の葛飾北斎」)(「現代日本の繁栄は、江戸時代の鎖国に源流あり」)。
その内容をかいつまんで説明すると、マイセンの近くにザクセン銀山という銀を大量に産出する貴重な山があった。そこでは銀を取ったあとに大量のごみの山ができていた。
ドイツの人たちは厄介なゴミだととらえていたが、東インド会社を経営し世界事情に長けていたオランダの人たちには宝の山に映った。そしてただ同然で買い取り、船に乗せて東へ東へと運んで行った。
そのゴミは酸化コバルトが多く含まれていることをオランダ人は知っていたのだ。イスラムの国々ではガラスにそれを混ぜてステンドグラスとなり、日本では有田焼の藍色を出す呉須となる。まさに貴重な素材がドイツからもたらされたのだ。
それだけではない。葛飾北斎の有名な「富嶽三十六景」などは、このドイツからもたらされた酸化コバルトの顔料によって実現できたという。ヨーロッパ人を魅了した北斎の有名な絵の数々は、実はドイツの銀山のゴミが原料だったのである。
佐賀県の山の中の小さな町に、世界史を変えるだけの力があったという事実は、何とも興味深い話と言えないだろうか。
(つづく)