【新刊】金時徳(キム・シドク)著『東アジア、海洋と大陸が出合う』(メディチ社)
若い学者の熱意は大変なものだ。ソウル大学奎章閣韓国学研究院の金時徳助教授(40)は、ここ3年、毎年本を出している。日本の古文献や文学・演劇作品などで壬辰(じんしん)倭乱(文禄・慶長の役)がどのように認識されていたかを分析した『彼らが見た壬辰倭乱』(2012)、『懲ヒ録』(ヒは比の下に必)の各種版本を検討して解説を加えた『校勘・解説 懲ヒ録』(2013)、日本の古い資料に載っている挿絵を通して壬辰倭乱の様子を復元した『絵になった壬辰倭乱』(2014)などだ。これらの著作は、韓国人の視線ではなく外から見る目を通して、16世紀に起こった国際戦争に対する認識の地平を拡大した。11年には、日本で出版した『異国征伐戦記の世界』が、外国人としては初めて日本古典文学学術賞を受賞した。漢文・日本語・中国語・満州語の読解能力を駆使して複数の文献を互いに検証し、韓国の歴史を世界史的観点から実証する研究を行っている。
金助教授は「現在はロシア語を学んでいる」と語った。高麗大学日文学科を卒業し、日本の古文献研究・教育機関「国文学研究資料館」で博士号を取得、2年前から現職にある。
今回出版した『東アジア、海洋と大陸が出合う』では、壬辰倭乱から現代に至る、ほぼ500年の歴史を取り上げた。長い期間を対象とする歴史研究は、場合によっては荒唐無稽な巨大理論に陥る危険もあるが、韓国内外の資料を丹念に分析し、隅々までディテールを生かした記述をすることで、巨大史と微視史を絶妙に組み合わせた。本書を読んでみると、著者の博覧強記ぶりに感嘆させられる。今月1日、ソウル大学の研究室で会った金助教授は「韓国は、およそ900回も侵略の被害ばかりを受けてきた平和の国だとか、逆に広大な領土を持つ帝国だったという主張が一部に存在する。自虐的でも幻想的でもないやり方で、韓国が世界と出合ってどのように生きてきたのか、具体的に観察することが本書の目的」と語った。