近年、相対貧困率を根拠として「日本は格差が大きい国」「貧困が多い国」とかいう、アホ極まりない言説が跋扈しているが、主要先進国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスあたり)の貧困状況について少しでも知っていれば、「日本は先進国の中では格差が大きい」なんてことがありえないことは一目瞭然だと思うんだが。
たとえば、時々話題になる広義のホームレスである「ネットカフェ難民」。アメリカだといわゆる「トレーラーハウス居住者」が割と実態として近いと思われるが、下記記事によると「米国勢調査局によれば、2012年時点でトレーラーハウス居住者は米国民のおおよそ6%」とのこと。実に2000万人が広義のホームレスというわけ。そんな国より貧困がひどい?ありえないでしょ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3E56P6JTSEQ01.html
なぜ「相対貧困率」だと日本は有数の貧困大国になるのかというと、理由はシンプルで「絶対的貧困層が少ないことによって中央値が高いから」。「相対貧困率」はその定義からして「全人口の中央値の半分未満の比率」なので、中央値が高ければ高いほど値が高くなる。下記URLにある国連による貧富比(上位10%:下位10%)の調査結果みれば一目瞭然で、日本は4.5倍と調査実施国でもっとも格差が少ない。ちなみにアメリカが15.9倍、イギリスが13.8倍、ドイツが6.9倍、フランスが9,1倍。
「一億総中流」というのは実のところ結構正しくて、貧乏とは言えないが割と貧しいロウアーミドル層から金持ちとは言えないが割と豊かなアッパーミドルにかけて、中流層が広く「厚い」のが日本の所得分布の状況。だから正社員vs非正規社員という構図は、当然ながら間違っているのだけど、どこの格差が大きいのか、という意味ではあってるわけ。
ただし片親世帯(≒シングルマザー)については、割と貧困がひどいのはガチ。生活保護の母子加算とか、そもそも生活保護を母子世帯は受けやすいとか、ネットだとミソジニー的に批判されがちだけど、あれって貧困対策として実に的確な政策なんだよね。日本は社会福祉を割と企業が負担してきたわけで(一方その代償でサービス残業やら各種ハラスメントやらの跋扈があるわけですが)、そこではカバーできない層のうちの最大クラスタであるシングルマザーをそこで割とカバーしてきたという。
まとめると、「相対的貧困率」は貧乏人が少なすぎるとむしろ値が高くなる欠陥指標なので少なくとも日本については役に立ちませんよ、と。