大阪都構想:投票権なし、在日の憂い「街づくり貢献も…」
毎日新聞 2015年05月13日 16時01分
大阪市を廃止し五つの特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票(17日投開票)は市内に住む外国人には投票権がない。大阪の街に根ざし、街づくりにも深く関わってきた在日コリアンからは「大事な決定に参加できないのは残念だ」との声も上がる。
都構想の住民投票は有権者を日本国民とする公職選挙法に準じて実施されるため、外国人は投票できない。
しかし、大阪市の人口約267万人のうち外国人登録人口は約12万人で、韓国籍か朝鮮籍の在日コリアンが大半を占める。特に韓国のアイドルのグッズや食品を売る店が並び観光地としても知られる「生野コリアタウン」を抱える生野区は全人口の約2割に上る。
「日本人と一緒に街づくりに取り組んできたのに一票を投じることができない」
精神障害者や在日コリアンを支援するNPO法人「聖公会生野センター」(同市生野区)で活動する呉光現(オクァンヒョン)さん(57)はこうこぼした。韓国籍の在日2世として同区で生まれ育ち、大学卒業後は地元で精神障害者の支援を続けてきた。
2004年には生野区の地域福祉計画の策定にも参加。在日コリアンをテーマにした部会で3年間、日本人の地元住民らと議論し、孤立化が進む在日1世の居場所作りなどを盛り込んだプランの作成にも関わった。過去に差別を受けた在日コリアンらは不信感を持つ人が多く、行政サービスを整備してもうまくいくとは限らない。呉さんは「在日の人の気持ちを知った上で行政支援をしていく必要がある」と指摘する。
都構想が実現すれば生野区は新しい特別区「東区」に再編される。呉さんは「生野区役所とある程度、信頼関係を築いてきた。新しい区になればゼロから始めなくてはならないかも」と心配している。そして「住民投票だけでなく、街づくりへの参加も難しくなるのではないか」。そんな不安を抱えながら、住民投票の行方を見守る。【田辺佑介】