BS日テレ討論で慰安婦「強制連行」の有無に明言避けた福島瑞穂氏


◆調査に福島氏が同席

 13日付の番組欄を見ていたら、党首の座を降りたからなのか、最近、テレビで姿を見る機会がめっきり少なくなっていた社民党副党首の福島瑞穂が、BS日テレの報道番組「深層NEWS」でジャーナリストの櫻井よしこと激論を交わすという。

 日本を代表する保守派の女性論客と、左派の女性政治家の初の“直接対決”というだけでも興味津々だが、それに加えて、福島と言えば、慰安婦問題を煽(あお)ったとしてその責任を追及されている。櫻井なら、きっとこの問題に触れるはずであると期待し、チャンネルを合わせたら、やはり慰安婦の「強制連行」について話題が及んだ。

 「福島さんは93年の河野談話が出る前、16人の元慰安婦に対する聞き取り調査に同席されましたね。あの時に、『強制連行だった』という証言はあったのですか」

 こう質問した櫻井に対して、福島は最初、「今言われて、メモを見ているわけではないので…」と、言葉を濁した。

 弁護士の福島が国会議員になったのは1998年だが、それより前(1991年)に、元慰安婦などが日本政府の補償を求めて東京地裁に起こした訴訟で、高木健一らとともに訴訟原告代理人に名を連ねた。そして、93年に政府が行った元慰安婦に対する調査に、オブザーバーとして同席していたのだ。

◆追及から逃げ切れず

 前述のように困惑した様子だった福島はそのあとで、「ただですね、私は河野長官談話の中でね、強制連行の場合もある…」と続け、河野談話が「甘言」「強圧」などによる“強制性”を認めたことに言及しながらも、櫻井の質問には正面から答えなかった。

 そこはジャーナリストの櫻井だ。せっかくのチャンスに誤魔化されてはなるものかとばかりに、追撃の手を緩めない。

 「私は河野談話について話すつもりはまったくないのです。ただ福島さんがね、(聞き取り調査の)現場におられましたでしょ。弁護士でいらしたし、物事をきちんとつめて、お聞きになっていると思いまして」と、追い打ちを掛けた。

 それでも、「私はオブザーバーでしたから」と逃げる福島。それに対して、櫻井は「でも聞いていらしたわけですよね。その時に強制連行という話をお聞きになったのか、どうなのかということを聞かせてほしい」と迫った。

 逃げ切れないと観念したのか、福島は「私は途中で日本に帰らざるをえなかったので、16人全員分ではないんですね。でも、強制連行ということはあったと思います」と、やっと強制連行証言に言及したが、その歯切れの悪さは隠しようもなかった。

 というのは、福島はかつてNHK番組で「例えば、だまされたり、誘拐をされたり、強制連行で連れて行かれるなどの例が本当に出てきましたので、何度聞いても心が痛むと思いました」と、強制連行の証言があったことを断言しているのだ。テレビに映った若かりし頃の彼女の姿は今もネットで見ることができる。

 もし、かつての彼女の言葉のごとくに、「何度聞いても心が痛む」というほどの衝撃的な強制連行の被害証言だったのなら、今でも忘れることはないはず。もちろん、櫻井の質問に最初「メモを見ているわけではないので」という曖昧な反応が出てくるはずはないのである。

◆日韓外交紛争を謀る

 強制連行を示す資料がまったくないことが知られるようになった上、済州島で慰安婦にするために現地の女性を強制連行したという吉田清治の証言が虚偽だったことを、それを大々的に報じた朝日新聞が認めた。この状況の変化の中で、かつてのように「強制連行の証言があった」と訴えても、視聴者は信用しない。それを分かっているから、福島は「あったと思います」と曖昧に語ったのだろう。

 元NHK職員で、アゴラ研究所所長の池田信夫は、その著書「朝日新聞 世紀の大誤報――慰安婦問題の深層」で、「韓国政府は政治決着しようとしたのに、『強制連行』を騒ぎ立てて日韓の外交紛争を作り出したのは、福島なのだ。彼女は政府がヒアリングを行なった元慰安婦の選定も自分と支援団体がやったことを認めている」と書いている。

 櫻井との討論で、福島が慰安婦の「強制連行の証言があった」とあえて強調しなかったことは、池田の指摘の裏付けと受け取れる。(敬称略)

(森田清策)

PAGE
TOP