【コラム】安倍演説を成功させた「話術」

人の心を動かすには「主張」よりも「話術」が必要だ

 とりわけ2冊の書籍が大きく影響した。1冊は戦闘に参戦した兵士の息子であるジェームス・ブラッドリーが執筆し2000年に出版された『Raising the Flag on Iwojima』(邦訳:硫黄島の星条旗)で、もう1冊は栗林中将が戦死の直前まで本国の家族に送っていた手紙を基に日本で2002年に出版された『「玉砕総指揮官」の絵手紙』だ。米日両国が記憶に残したくない傷と考えてきた硫黄島の戦いについて、この2冊はあらためて再評価を行うきっかけとなった。

 再評価の口火を切ったのは、クリント・イーストウッドが監督を務め、スティーブン・スピルバーグも制作に関与した映画『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』(いずれも2006)だった。どちらも上記の2冊の本を脚色したものだが、前編は米国側の視角から、後篇は日本側からの視角から描かれている。イーストウッドは栗林中将が日本の家族に送った手紙を読みながら、戦争と人間の生、そして祖国のために犠牲をいとわない栗林中将の人間的な側面に感銘を受け、これらの作品を企画したという。戦争の悲惨さや若者たちの犠牲という重いテーマについて、いずれの映画もこれらを普遍的な観点から誰もが考えるきっかけを与えてくれるものだった。その意味でどちらも「傑作」と評されている。

 韓国も歴史問題について日本に態度を改めるよう求めるだけでは、日本はもちろん世界中の人たちの心を動かすことはできないだろう。人間は心が動いてこそ相手の主張も受け入れられるからだ。人の心を動かすには、それなりに感動できるストーリーが必要だ。われわれも歴史に対して世界の誰もが共感し感動できるナラティブを積極的につくり上げていく戦略が必要ではないだろうか。

国際部=崔元碩(チェ・ウォンソク)次長
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【コラム】安倍演説を成功させた「話術」

right

関連ニュース