■摘発側エキスパートが売春街の女性擁護、姦通罪廃止で勢い?
違憲側参考人として、異色の専門家も証言台に立った。韓南大学警察行政学科のキム・ガンジャ客員教授だ。
キム氏は「ミアリテキサス」と呼ばれる売春街を抱えるソウルの鍾岩(チョンアム)警察署長を務め、00年に集中取り締まりを実施。02年には、警察庁の女性青少年課長に就任し、全国の風俗街の取り締まりの陣頭指揮を執ってきた。摘発側の現場を知り尽くしたエキスパートだ。
一方で、売春街の貧しい女性らに寄り添う姿勢から、貧しい人々を助けた中国の偉人になぞらえ、「ミアリの包青天」ともたたえられた。
公開弁論では、自らの経験から「売春街の女性のほとんどが社会的弱者だ。処罰は、彼女たちの生活を脅かすだけで、性売買根絶には役立たなかった」と証言。摘発を強めれば、住宅街などで隠れた売春が増えるだけで、「性的に疎外された男性のためにも限定的な公娼制度が必要だ」とも提唱した。
一方、特別法は合憲だとする法務省の代理人は「売春は性を商品化して健全な性風俗を害する」と主張した上で、「売春の拡散は、人身売買など非自発的な売春も拡大させる悪影響が伴う」と指摘した。
違憲派は、生活のためにやむを得ない「生計型売春」に限って認めるべきだと訴えるが、生計型とそうでないものをどう線引きするかが明確でない。裁判官からも「生計型と非生計型をどう区別するのか」といった質問が投げられた。
売春処罰の合法性議論の活発化の背景として、配偶者以外との性行為を禁じた姦通罪について、憲法裁が2月、「違憲」とする判断を示した影響も指摘される。憲法裁が「性的自己決定権を侵害する」として、同罪を違憲としたため、処罰違憲派は、性売買特別法をめぐる合憲の可否にも援用すべきだと勢いづいているとされる。