韓国で売春を罰する法律は、違憲か合憲かが議論を呼んでいる。憲法裁判所では、公開弁論が開かれ、違憲派は「性的自己決定権や職業選択の自由を侵す」として限定的に売春を認めるよう求めた。合憲派は「性売買は風紀を乱すだけでなく、人間の尊厳を損なう」と主張する。売春で生計を立てる女性らは「生活の糧を奪うな」と繰り返し訴えており、“尊厳”を賭けた激論が繰り広げられている。(桜井紀雄)
■「厳然たる職業だ」異議申し立てた一人の女性
韓国では、2004年に売買春行為を処罰する性売買特別法が施行された。「性売買をした者は1年以下の懲役または300万ウォン(約33万円)以下の罰金、拘留、科料に処する」と定められ、売春した女性と買春した男性双方が処罰対象。体や口、道具を使った「類似性交行為」も対象となる。
同法施行以来、売春で生計を立ててきた女性らがサングラスやマスクで素顔を隠して度々、集団でデモを強行し、「職を奪うな」などと訴えてきた。さらには、裁判の場で真っ向から異議を申し立てた女性(44)がいる。
聯合ニュースや朝鮮日報などによると、女性は、ソウル・清凉里(チョンニャンニ)の売春街で12年、学生相手に13万ウォンで性行為をしたとして略式起訴されたが、正式裁判を申し立て、「売春した女性の処罰は基本権の制限に当たる」と訴えた。
メディアの前でも「何度捕まっても食べていくため、この仕事をしなければならない。労働力を売って金をもらう厳然たる職業だ」と主張。「売買春を一部合法化すれば、子供や女性への性的暴行も減る」とも強調したという。
女性の申し立てを受け、ソウル北部地裁は、性売買特別法が違憲か合憲かを問う違憲法律審判を憲法裁判所に請求。4月9日には、憲法裁判所で公開弁論が開かれた。
公開弁論では、特別法の廃止を求め、売春業に従事する女性ら882人が署名した嘆願書が提出された。
嘆願書は「搾取や強要のない性売買には被害者がいない」とした上で、「厳しく取り締まったからといって、韓国社会の道徳が向上するとはいえないのではないか」と法律の効果に異議を唱えた。