日本の葉巻型クッキー:UAEで「世界一おいしい」

毎日新聞 2015年05月17日 12時23分(最終更新 05月17日 17時31分)

ヨックモックのシガール
ヨックモックのシガール

 ◇繊細な口当たり、心つかむ

 サクサクのクッキーが葉巻のようにくるりと巻かれバターの豊かな香りが特徴の洋菓子「シガール」。ヨックモック(本社・東京都千代田区)が百貨店などで40年以上前から販売している定番の商品だが、近年、砂漠の国である中東のアラブ首長国連邦(UAE)で大人気だ。

 ヨックモックがUAEのアブダビに1号店を出店したのは2012年10月。家電販売などを手がける現地のパートナー企業の経営者から「世界で一番おいしいクッキーを中東で広めたい」と熱烈な誘いを受けたことがきっかけだった。栃木県日光市の工場などで製造したものをそのまま空輸しているため価格は日本の2.5倍程度。シガール20本入りで110ディルハム(約3500円)とやや高価だが、100個以上購入する客も多い。「スーツケースに入るだけ売って」とまとめ買いする客も現れるほどだ。

 なぜ中東で甘いお菓子が人気なのか。UAEなど中東諸国ではイスラム教の戒律でアルコールを飲まない。そのためか「甘いお菓子を食べることは娯楽の一つと考えられている」(海外事業グループの高橋達也グループ長)。欧米の菓子店も参入しているが、日本製ならではの繊細な口当たりや香りが現地の富裕層の心をつかんでいるという。

 接客も日本流を持ち込んだ。日本語で「いらっしゃいませ」と客を迎え、商品について丁寧に説明して販売する。購入した商品を奇麗な包装紙で1ケースずつ包むこまやかさも好評だという。

 UAE進出から2年半で店舗数は19まで拡大した。世界最大のショッピングセンターであるドバイ・モールに入る店舗の売り上げは、日本国内のトップクラスの店舗に匹敵するほどだ。今後について高橋氏は「UAEにある店舗の質を上げるとともに、他の中東諸国にも店舗網を広げたい」と話す。【神崎修一】

 ◇海外にも79店舗

 ヨックモックは1969年創業の老舗の洋菓子製造販売会社。看板商品のシガールも同年、販売を始めた。当初は焼きたての生地を人の手で一つ一つ巻いていたという。シガールのほかマカデミアナッツなどの入った定番クッキーもあり、こちらも中東で人気だ。社名は創業者の藤縄則一(ふじなわ・のりいち)氏が美しさに感動したスウェーデンの小さな町に由来する。国内では大手百貨店の「デパ地下」や駅、空港などに約190店。海外は米国やタイ、台湾などに79店舗(2015年4月現在)を展開する。

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