先日、「ギフテッド」並びに「女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました」が電子書籍で配信されました。
■ギフテッド 1巻■
http://mobile.dengeki.com/detail/ce0a1b58-09fe-4b24-a96a-44f3a64a85d1/
■ギフテッド 2巻■
http://mobile.dengeki.com/detail/a170645a-fe8e-45ce-81c3-3b86b9fd3708/
■女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました 1巻■
http://mobile.dengeki.com/detail/b177fc4e-4be4-45f7-95b1-9cbb0e2b841f/
■女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました 2巻■
http://mobile.dengeki.com/detail/2d27877b-7f66-43b2-9dec-a1f2c311f34d/
■女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました 3巻■
http://mobile.dengeki.com/detail/e7bbf675-9b95-46a4-9298-59b5324d0cf2/
それに伴い、ギフテッドの3巻のプロットを公開することにしました。
現状、ギフテッドの3巻は発売予定にありません。執筆もしておりません。あるのは発売予定にないとわかってからもちまちまと改善していたプロットだけです。
時折3巻を期待しているとのお声をいただくのですが、それは私の意志ではどうにもならないことのため、ご理解ください。
ただギフテッドは私にとってデビュー作であり、自分のやりたいことが詰まった作品なので、何かできないかと思いまして。
プロットを持っていても腐ってしまうだけのため、公開することにしました。
ああ、二丸はこんなことを考えていたんだ、くらいに思って楽しんでいただければ幸いです。
無論、この公開は編集者の許可のもと、行われています。
許可をしてくださった編集者様に、この場を借りて感謝を申し上げます。
プロットと言っても、3巻の終わりまでのストーリーが描かれているため、ある意味3巻のネタバレともいえるものです。
また逆にストーリーの主軸しか書いておらず、細かいところ(例えばエルとか)について、全然触れられていません。
その辺り、ご理解ください。
1巻は「ギフテッドの歪さ」のお話。
2巻は「ギフテッドの喜びとアンチギフテッド」のお話。
3巻は「ギフテッドの理想と呪い」のお話。
として自分では思い描いていたものです。
それではギフテッド3巻プロットをどうぞ。
七賢人石刀昴にアフリカへ連れてこられた弥助。
与えられた任務は『昴が道を誤った場合、昴を殺すこと』だった--
平和で、無宗教に近く、宗教的寛容性のある国、日本。
そんな日本で培った道徳を人並み以上に持ち、なおかつ冷静な判断を下せる。
そうしたことを弥助が見込まれて依頼された任務だった。
弥助は戸惑いながらも、昴に促され引き受ける。
『聖書』の改ざん。これを昴は何でもないことのように言う。
「宗教における物事の定義は、地動説のようにこれまでも変化しています」
「アフリカ最大の勢力を誇るイエル教の聖書は、多くの宗教と同様、完全な形で現在まで伝わっていません」
「死海文書のように、新たに文献が発見されて聖書の内容が変わっても不自然ではないのです」
問題はむしろ、変化を『一般の信徒が認められるか』だった。
改ざん内容は、『沈黙の宗教』と呼ばれるイエル教に『話すことの重要性』と『人を殺すことに正当性などないこと』を植え付けること。
これを実現させるため、天子峰直轄地エスラスを中心に弥助は昴の秘書の立場でついて回る。
歴史学者、考古学者、宗教指導者、独裁者--
利害の渦巻く中、それでも昴は前に進もうとする。
そうして弥助は知っていく。イエル教の良さと抱える問題点を。
昴は揺れ動いていた。絶大なる権力と救えない人々、そして理想と現実の狭間で。
その葛藤こそが、自らが道を誤ったときの『処刑人』として弥助を用意したことからも現れていた。
昴は双子の兄、石刀彼方--その過去と理想を語る。
昴はその理想のためなら、悪魔に魂を食わせても構わないと言う。
しかしその裏で七賢人三里信一郎はアフリカ各地に武器を供与し、不満の芽に油を注ごうとしていた。
その魔の手は昴不在のエスラスにも及び、街に軍隊が迫りくる。
残った天子峰の人員の中で最高位だった弥助は、民間人の脱出を指揮する。
そんな中、思わぬ助っ人伊勢七彦と共に、弥助は二万人の脱出行という困難な旅に出ることになる。
迫りくる軍隊。倒れていく人々。
弱い人々を切り捨てられない弥助は、七彦から『ギフテッドの呪いに憑かれている』と告げられる。
「理想を捨てられないのさ、ギフテッドは。だからほとんどのギフテッドは何者にもなれず、現実に殺されてしまうんだ」
弥助の理想--それはあまりにも平凡でありきたりなもの。
『努力した者が報われる』
『苦しい思いをした人は後に救われる』
『弱い者を力を持つ者が助ける』
日本では当たり前に語られる道徳。痛みを知らない弥助が物事の指針として学んできたもの。
それはすでに、弥助にとって分割できない理想となっていた。
弥助は平穏を捨て、天子峰に身を投じた自分の心の動きを難民に囲まれたアフリカで初めて知る。
綾芽に輝きを見出したのは、平凡な生活では見つからなかった、苦しみと努力を糧に這い上がろうとする人間の美しさを見つけたためだった。
そんな理想は、この場では何の役にも立たなかった。ただ弱い人間から死んでいく。
弥助は自らの無力さを嘆き、『ギフテッドの呪い』を胸に刻む。
二つの街への分かれ道。そこで弥助は決断する。
一団を七彦に任せ、自分一人でここに残る、と。
ここで軍隊を食い止め、二万人の哀れな人々を救おうとする弥助に、七彦は「お前は命が惜しくないのか」と叫ぶ。
だが弥助は言う。
「これが俺のギフテッドだから」
その言葉に七彦はそれ以上の言葉は無意味と悟り、民間人の指揮を引き受ける。
残った弥助は、やってきた軍隊に一人立ちふさがる。
独裁者は多少の話をしただけで弥助の意図を悟り、即座に弥助の左手を切り落とす。
これで観念すると思いきや、痛みを感じない弥助は一切動じない。
平然と話を続け、弥助は独裁者との駆け引きの末、軍隊を民間人の逃げた道とは違う方向へ誘導する。
しかし助けてくれるほど軍隊は甘いものではなかった。
砂漠に一人放置され、出血はやまず、ヘリコプターの音が聞こえたところで意識を失う。
気がつくと弥助は病院の一室にいた。
昴が入ってきて、危ないところだったと語る。
だがどこか空々しいものを感じ、弥助は言う。
「これは、お前の計画通りなのか」
昴は生真面目な顔となり、はいとつぶやく。
そして差し出す。弥助に渡していた銃を。
「撃ちますか?」
と尋ねる昴に、
「お前がやったことは許せない。でも俺は撃てない、お前が間違っているかまだ判断できないから」
と返す弥助。
「もうあなたには、私が何を依頼するかわかっているでしょう?」
と言う昴に、弥助は嫌だ、俺は無力だったと言葉を漏らす。
あなたの行動は誰が見ても立派なものでした、と告げる昴に、弥助は陰鬱な面持ちでつぶやく。
「--お前は俺に英雄になれというのか」
昴の宣伝によって、一夜にして二万人救出の英雄となった弥助。
そしてそれは、昴の入念な作戦によって作られた虚像の英雄だった。
昴は聖書の改ざんを一般の信徒に信じてもらうため、宗教的指導者の言葉だけでは足りないと思っていた。
宗教的指導者は多数派を引き込むことができるが、宗教は各派があり、すべてを網羅することができない。
そこで欲しかったのは信徒にさえ影響力を持つ『英雄』だった。
その英雄の条件として昴が挙げたのは、『無宗教』『共感の得られやすい若い人物』『身を捨ててでも人を助けようとする人物』といった要素だった。
そして白羽の矢がたったのが弥助だった。
すでに三里信一郎の魔の手がアフリカ全土に及び、アフリカ支部で持つ兵力では抑えきれない状態となっていた。
すべては守り切れないと見て、昴はあえて天子峰の直轄地エスラスを空け、弥助を配置した。
それがアフリカにとってもっとも良いと考えて。
報道で弥助の近況を知った綾芽はただ事ではないことが起きていることを知る。
そして三里信一郎が裏で動いていることを調べ上げ、詳しい内容を本人から屈辱を飲んで聞き出す。
アフリカを舞台に世界規模で紛争が起きようとしていることを知った綾芽は弥助を助けようと他の七賢人と接触を図ろうとする。
そんな折、電話をかけてきた六条隼人はなぜか中東・中央・西アジア・インド地区で係長に出世していた。
聞いてみると、七賢人の一人ディレキ・トゥランに見込まれて出世したのだと話す。
綾芽はすぐに隼人と再会し、ディレキ・トゥランと会うためトルコへ飛ぶ。
弥助の人気はすでに世界規模となっていた。
世界にネットワークを持つテレビ局の取材で、弥助は軍隊を出して民間人を虐殺しようとした独裁者を名指しで非難する。
しかしその独裁者のバックには三里信一郎がおり、次第に昴と信一郎の対立構造は明確となっていく。
またさらに、昴の情報では独裁者のバックにヨーロッパ担当の七賢人ニコラス・シェーンベルグも絡んでいることもわかり、世界を味方につけても安心ができる状況ではない。
アフリカ全土で起こる原理主義者による紛争を昴では抑えきれなくなっていく。
そこで昴は聖書の改ざんを前倒しで行うことを決める。
聖書の改ざんにより、戦う意味を消失させようとしたのだった。
その舞台として選ばれたのはイエル教の聖地。しかしその地は現在独裁者が支配しようと戦いが起こっている場所だった。
戦力が足りない昴のもとへ、七賢人ディレキ・トゥランをはじめとした援軍が届く。
その援軍を使い、聖地防衛作戦が遂行されるさなか、聖書の改ざんが始まる--
まだ銃声冷めやらぬ聖地で、昴と宗教指導者は新たな聖書が見つかったことを公表する。
そしてその内容、専門家の見識、これを認めるとの宗教指導者の意見をを踏まえ、弥助は世界へと語りかける。
『努力した者が報われる』
『苦しい思いをした人は後に救われる』
『弱い者を力を持つ者が助ける』
なぜ世界はそうならないのか。
自らの理想を胸に、弥助は戦いに身を落とす人々に語り掛ける。
+エピローグ
<上記で出てきた新キャラクター>
〇ディレキ・トゥラン
32歳。七賢人の一人。中東・中央・西アジア・インド地区支社長。七賢人の席次では5位。(三里信一郎が1位、石刀昴が7位)
小柄でとにかく明るい男。オタク。童貞。ひげもじゃもじゃ。
能力的に言えば七賢人の中でダントツ最低であり、自分では何も判断しない。それでもディレキが七賢人となれたのは『人を見る目』だけがとびぬけて卓越しているため。
気に行った人物がいれば仲間にし、出世させ、仕事を全部信頼できる人に丸投げする。だが責任は取る。一種の理想的上司。
三里信一郎からは『十年後、もっとも気をつけるべき男』と評されている。
〇ニコラス・シェーンベルグ
27歳。七賢人の一人。ヨーロッパ地区支社長。七賢人の席次では3位。
何もかも不明の男。能力的には三里信一郎に匹敵すると言われている。
常に悪に加担し、旗色が悪くなると裏切るという行動を取っており、『裏切り者』と呼ばれ、三里信一郎より悪評がある。
その目的は現実の世界に『絶対悪』を担う男を存在させることであり、
世界が平和にならないのは『絶対悪』が存在しないためだと考えている。
そのため自らがこの世のあらゆる汚名を受け、悪の化身(一種の神)を作り出そうとしている。
『悪の化身としてのニコラス・シェーンベルグ』を目指しているため、偽名を使って動くことが多い。
- 2015/05/16(土) 20:56:12|
- 小説紹介
-
| トラックバック:0
-