ローマ=山尾有紀恵
2015年5月17日22時31分
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は17日、19世紀のパレスチナで活動した修道女2人をパレスチナ人(パレスチナ地方出身のアラブ人)として初めて、カトリックで最高の崇敬対象である「聖人」に認定した。法王庁は13日にパレスチナと国同士の協定を結ぶと決めたばかり。聖人認定自体の政治的意味は薄いが、パレスチナ自治政府は「法王の発信力を和平への一助に」と期待を高めている。
新たに聖人に認定されたのは、19世紀のオスマン帝国時代のパレスチナに修道院や学校を設立し、女性の教育や福祉の向上に努めた修道女2人。法王はバチカンのサンピエトロ広場で行われた式典で2人の偉業の一つとして「イスラム世界との協力」を挙げた。式典には自治政府のアッバス議長も出席。前日に声明で「パレスチナは戦争の地ではない。キリスト教徒とイスラム教徒は聖地を共有し、我々の国の設立を求めていく」と述べていた。
訪問に先立つ13日、法王庁はパレスチナでのカトリックの活動に関する協定に合意し、その中でパレスチナを「国家」と正式に承認した。バチカンはパレスチナが2012年11月に国連総会で「オブザーバー国家」と認められてから国として扱ってきたが、今回、国同士の協定とすることでパレスチナ国家樹立を改めて後押しする狙いがある。
イスラエルとパレスチナの和平交渉は昨年4月に頓挫した。法王は同6月にアッバス氏とイスラエルのペレス大統領(当時)をバチカンに招き、対話を仲介した。だが、昨夏のイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの大規模攻撃で交渉再開の見通しがたたなくなり、さらに今月イスラエルの右派・極右連立政権が発足したことで進展がほぼ絶望的になっている。法王は16日のアッバス氏との会談で戦争の悪霊を破壊するとされる平和の天使のメダルを手渡し、「あなたは平和の天使だ」と述べ、和平交渉の早期再開を呼びかけた。(ローマ=山尾有紀恵)
おすすめコンテンツ
PR比べてお得!