少年の犯罪や非行についての手続きを定める少年法の対象を引き下げるかどうか。自民党内で議論が進んでいる。

 20歳未満とされているのを、18歳未満とする案である。今の国会で公職選挙法が改正され、18歳から投票できる見通しとなったのがきっかけだ。

 「18歳で投票の権利をもつ以上、義務や責任も担うべきだ」という声は小さくない。重い罪を犯しても、少年法の対象なら名前や写真の報道が禁じられることへの批判も出ている。

 親などの同意なしで契約をかわせる民法の成年年齢なども合わせて、検討中だ。

 しかし、本人の立ち直りを重んじる少年法の対象をどこまでとするかは、社会が犯罪とどう向きあうかという問題である。

 罪を犯した若者の更生を促し再犯させない社会にする観点が不可欠で、投票年齢引き下げの勢いで議論することではない。

 若い世代の犯罪や非行の背景には生い立ち、家族関係など、本人にはどうしようもない事情が横たわっていることが多い。

 少年法の特徴は、警察が捜査した事件がすべて家裁に送られ、事件の背景や家庭環境などを調べる点にある。

 刑事責任が問われる14歳以上の場合、その上で、家裁の少年審判を受け、保護観察、少年院などの保護処分になることもあれば、刑事裁判を経て少年刑務所に行く刑事処分もありうる。より広い選択肢から、本人に合ったものにする利点がある。

 刑事処分の方が、自由が奪われる期間は短いこともある。一方、刑務所より教育的な環境の少年院で、じっくり自分と向き合う方が更生につながることもあるだろう。

 18、19歳といえば、見た目は大人に近いかもしれないが、内面は未熟で不安定なこともある。成長の個人差も大きく、選択肢は多い方がいい。

 18、19歳の犯罪が増えているわけでもない。刑法犯となる件数は、03年の約2万9千人から13年の約1万1千人と、むしろ大きく減る傾向にある。

 また、重い罪を犯した場合、少年法の対象とはいえ18、19歳の扱いは成人にかなり近くなっている。犯罪時点で18歳未満なら死刑は無期刑になり、無期刑も減刑されうるが、18、19歳にはこの緩和はない。

 「人は変われる」との立場にたつ少年法の理念は本来、大人にも生かされるべきものだ。対象を絞り込むよりむしろ、その理念を成人の刑務所での処遇や保護観察にも広げることに目を向けるときではないか。