身近なスポーツを取り巻く環境は、どう変わるのだろう。

 スポーツ庁が10月に誕生する。文科省の外局に置かれ、各省庁に分散していたスポーツ行政を束ねる司令塔としての役割が期待される。

 2020年東京五輪・パラリンピックの招致成功が追い風になった。日本オリンピック委員会(JOC)はじめ、競技団体は意気が上がる。

 東京五輪では金メダル数で世界3位をめざせ、と国にハッパをかけられ、すでに五輪競技の選手強化費は今年度63億円と、前年から22億円も増えた。JOCは五輪までの6年間で800億~1千億円の強化費が欲しいと、国に要望もした。

 ちょっと、待ってほしい。

 メダルラッシュは喝采を呼ぶだろうが、創設されるのは五輪庁ではない。ピラミッドに例えるなら、頂点のトップアスリートだけでなく、障害者スポーツを含め、幅広い国民がスポーツに親しめる環境作りが理想の姿。バランスが大切だ。

 予算が膨らむ頂上に比べ、裾野の環境はお寒い。国内の公共スポーツ施設は1996年の約6万5千カ所から12年間で約1万2千カ所も減った。毎年1千カ所が消えている計算になる。

 市町村の合併、人口減の影響もあるが、地方財政が悪化し、老朽化したまま閉鎖するケースがある。そうした右肩下がりの流れは止まりそうにない。

 五輪選手の躍動に感動し、自分もやりたいと少年少女が思い立っても、近所に施設がなければ願いはかなわない。膨大な五輪投資をする意義が薄れる。

 これまで健康・体力作りは厚労省、運動公園整備は国交省などと所管が分かれていた。そうした事業を一元化する青写真も描かれたが、既得権を持つ省庁の抵抗で見送りになったのは残念だ。効率化できる分野については順次、移譲を促したい。

 なかでも、健康増進はスポーツと身近な関係にある。

 今や年間約40兆円に上る医療費のうち、運動で抑制できる部分は7・7%に上る。筑波大の調査では、健康運動教室に参加した高齢者は、非参加者より年間約10万円、医療費が少なく済んだという研究データもある。

 スポーツは一人だけでなく、大勢で楽しめる。人と人の絆、連帯が生まれる。文科省はスポーツを通して人々が一体感を持てる地域活性化事業を始めた。

 健康で活力に満ちた長寿社会。半世紀後には65歳以上が国民の約4割になるニッポンの未来を見据え、スポーツの効用を生かしたい。