企業決算、最高益相次ぐ=円安、訪日客が貢献〔深層探訪〕
時事通信 5月16日(土)8時26分配信
東京証券取引所に上場する企業の2015年3月期決算発表が11日、ピークを越えた。円安や堅調な米国経済を背景に、自動車や電機など輸出企業が業績を拡大し、大幅増益を達成した。昨年4月の消費税増税で落ち込んだ消費の回復が遅れる中、訪日外国人客の増加が景気を下支えした。16年3月期は、海外経済の先行きに不透明感も漂うが、主要企業の賃金引き上げで消費の緩やかな回復が期待され、増益基調が続くと予想される。
◇自動車がけん引
時事通信社の集計によると、11日までに開示された東証1部638社(金融を除く)の15年3月期の連結決算は、売上高が前期比4.1%増、経常利益が10.8%増と増収増益となった。
自動車は好調な米国市場に円安進行の追い風を受け、トヨタ自動車、富士重工業、マツダなどが最高益を更新した。トヨタの豊田章男社長は「グループ一丸の原価改善や、為替が円安方向で推移したことで利益を確保できた」と、日本企業で初めて純利益が2兆円を超えた要因を説明した。
電機大手は円安効果に加え、好調な自動車関連事業が業績拡大に寄与した。パナソニックは自動車用蓄電池などが好調で純利益が5割近く増え、2年連続の黒字。三菱電機も最高益を達成した。
◇「爆買い」が下支え
消費を支えるのは、中国人の「爆買い」と呼ばれる旺盛な購買力に代表される観光需要だ。中国人や東南アジア向けのビザ緩和と免税品の拡大により、百貨店では化粧品やブランド品など免税品の売り上げが伸びた。資生堂は下半期の外国人向け販売が上半期の2.5倍を記録。魚谷雅彦社長は「成長分野として一層強化していく」と語る。
小田急電鉄は、箱根や鎌倉方面の観光輸送が好調に推移、傘下の百貨店の免税売上高も増え、過去最高益を更新した。
一方、昨年秋以降の急激な原油安は、石油元売りを直撃した。JXホールディングスや出光興産は巨額な在庫評価損を計上し、純損益が1000億円を超える赤字に転落した。大手商社も資源価格の下落などが響き、住友商事は16年ぶりの赤字決算に沈んだ。
◇新興国経済が鍵
時事通信社の集計では、16年3月期の企業業績見通しは、売上高が2.2%増、経常利益が12.7%増となった。企業は今期、為替や原油価格、海外経済のほか、国内消費に注意を払う。
ヤマダ電機は「消費税増税後の反動減の一巡などにより、堅調に推移する」(岡本潤専務)と期待する。好業績が続く自動車は「新興国の中で、資源輸出国は価格低下で経済環境が低迷している」(トヨタ)と不透明な海外経済の動向を懸念。新興国などで販売減を見込んだ。
16年3月期について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真シニアクオンツアナリストは「引き続き、全体的に堅調な業績が予想されるが、中国をはじめとする新興国経済が鍵を握りそうだ」と指摘している。
◇主な企業の連結純損益
2015年3月期 16年3月期予想
トヨタ 21,733( 19.2) 22,500( 3.5)
富士重工 2,618( 26.7) 3,370( 28.7)
マツダ 1,588( 17.0) 1,400( ▲11.8)
パナソニック 1,794( 49.0) 1,800( 0.3)
三菱電機 2,346( 52.9) 2,200( ▲ 6.3)
JX ▲ 2,772( − ) 1,600( − )
出光興産 ▲ 1,379( − ) 560( − )
住友商事 ▲ 731( − ) 2,300( − )
ヤマダ電機 93(▲50.0) 254( 171.9)
小田急 301( 20.4) 272( ▲ 9.8)
(注)単位億円。カッコ内は前期比増減率%、▲はマイナスまたは赤字。
−は比較できず。トヨタ、パナソニック、三菱電機は米国会計基準、住友
商事は国際会計基準(IFRS)
最終更新:5月16日(土)11時49分
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