ヤドンが劇場用アニメを解析してます。
ミュウツーの逆襲ルギア爆誕



こんにちは。 今回取り上げるのは劇場長編第二段の「幻のポケモン ルギア爆誕」です。
 前作が哲学的なテーマ性を押し出した作品だったので、今回もそれを期待して観に行った方が多かったのではないでしょうか?
シャーッ! なんだかルギアって全然強くないし、生まれてないし、
 鳥ポケモンが暴れるだけ暴れたあとに、笛を吹いたらいつの間にかみんな仲良くなってましたって感じで、オレはあまり楽しめなかったぜー!!
チャンモーー! アタシはルギア様がカッコよくて面白かったけどなー。 それにロケット団やカスミちゃんも活躍も見逃せないチャモ!
前作「ミュウツーの逆襲」は難解で理解しがたい内容だった事に対する不評からか、今作の「ルギア爆誕」は非常にわかりやすく作られています。
 しかしこれは暴れるポケモンや世界を救うための方法等 表面的なもので、作品のテーマを理解するには前作同様深く考える必要があります。

まず最初に、ルギア爆誕は娯楽映画として作られているので、それで楽しめばいい作品です。
 そして少し考えてみると、この作品は環境保護を訴えている事がわかります。
 しかし それだけだと良くわからない部分も出てきます。
 このわからない部分について考えてることが、この作品の隠れた狙いでもありますが、
 考える事をやめて「ご都合主義の娯楽映画」で片付けても、それはそれでいいと思います。
シャーッ! オレは見たその日に考える事をやめたぜ。
ですが今回は全てに答えが出るまで考えて見ましょう。 きっとこの作品がもっと楽しめるようになるハズです。
 まずは作品の解説に入る前に、脚本を担当しました首藤剛志さんがルギア爆誕の解説本に載せたコメントを紹介します。

動画枚数10万枚! 終始動きます。


[This is Animationより]
タケシさんからのメッセージ。
タケシ「ポケモンの劇場版第二編は、昔なつかしい冒険活劇を目標に作られました。 目まぐるしく駆けずり回る登場人物を、
 何も考えずに あれよあれよと見ているうちにエンドマークがでてきてしまえば それでいい映画です。 でも、
 いくら冒険活劇とは言え、前作のミュウツーの逆襲は『私は誰だ…』という自己存在の問いかけがテーマになっていました。
 今回の作品にも、それに対する答えのようなものが、裏の裏の奥でかすかに匂っているかもしれません。
 『私は誰だ…?』と聞かれたら『僕は僕だ。 他の誰でもない僕だ』…ということ。
 ファイヤー達の、存在のバランスが崩されることで世界の破滅がはじまり、
 それぞれがそれぞれの自分に戻ったことで世界は元に戻ります。
 この世界は音楽のシンフォニーのようなものかもしれません。
 自分が、自分という名の楽器を、無理せず精一杯演奏し続けるかぎり、
 あなたの音楽は壊れもしないし周りの世界も、壊れもせず調和している。
 だから、最後の方でサトシのママがサトシに言った……。
 『世界を救うなんて命がけでする事じゃない。 あなたはあなた……他の誰でもない。
 たったひとりのあなたなのだから、自分を大切にして、あなたはあなたのやりたいことを目指しなさい』
 この少し非常識に聞こえる台詞のことを、親子のみなさんでちょっぴり話し合っていただけると、
 このアニメは他の映画でない今の時代の冒険映画としての存在価値があるのかもしれません。」

なんだか、もうほとんど結論を言っちゃってる気がするけど…。
ここでは結論にたどり着くまでも話していくので大丈夫です。
 まずはじめに、この作品内の世界観と伝説から理解することが大事です。
 劇中では世界観について必要最低限の事しか書かれていませんが、一つずつ考えいけば ちゃんとわかるようになっています。

物語は省略が大事。

アーシア島は、人が住む近代化の進んだ本島と、三つの島からなりたっています。
 三つの島には伝説のポケモン、ファイヤー・サンダー・フリーザーが同時に生息したため
 たがいに影響を及ぼしあい通常個体よりも強力なチカラを持つようになります。
 そして三体のポケモンが三つの島を支配することで深層海流の流れに影響を与え、世界の自然そのものが変わっていくようになりました。
 (劇中、島を支配できない状態になると海流の流れが変わるので、三体のポケモンは島を支配することで深層海流に影響が与えられると考えます。)
 そして三体のポケモンはアーシア島住民から火の神、雷の神、氷の神と呼ばれるようになり、アーシア島民は三神を祭るようになります。
 今、この世界で生き物が生きていけるのは、三神が三つの島をそれぞれ一つずつ支配しているからです。
 ただし、これは三神が望んでやっていることではなく、偶然そうなった結果としてできたものです。 三神はとても仲が悪く、いがみ合っています。
 また、この三つの神によるバランスの構造を、オーキド博士は生命の誕生として科学的にたとえてくれます。

博士「氷の神と呼ばれる何かのチカラが海を凍らせれば、火の神と呼ばれる何かが氷を溶かし、海の底に海流を作る。
 更に かくはん(かき混ぜること)された海水に雷の神の電気が作用して生物の元であるタンパク質を作りだす。
 つまり、三つの神のバランスの妙が深層海流をゆるやかに流しもし、この星の生命を生みだしもしたんじゃ、
 深層海流の中心地は生命の誕生の地。 全ての生命のふるさとといえる。」

実際は三神が島の支配が出来なくなることで
 島への海流の流れそのものがブッツリ断ち切られているので、
 火や氷や雷で直接海水に化学変化を起こしているワケではありません。
 あくまでも、博士による科学的なたとえ話だと解釈してください。

一本まるごと無くなってます。

次に、劇中のシーンから古代アーシア島民と三神の関わりを考えていきます。
 まずアーシア本島、祭壇の石碑(せきひ)には以下のような伝説が記されています。
 
「火の神、雷の神、氷の神に触れるべからず。 されば天地怒り、世界は破滅へ向かう。」
 古代アーシア島民は、三神への干渉は自然のバランスを崩し世界の終わりになると警告しています。
 石碑にはさらに続きがあります。
 
「海の神破滅を救わんと現われん、されど世界の破滅を防ぐことならず。 優れたる操り人現われ、神々の怒りしずめん限り。」
 ずいぶん具体的です。 過去に三神が暴れ世界が崩壊しかけた時にルギアが現わるが、
 三神の怒りをしずめたのはポケモントレーナーであったことがわかります。

鳥の仮装をするアーシア島民。


意味がわかってない島民の娘。
そして現代になり、この伝説が本当にあった事なのか 島民にもわからなくなりますが、
 今も島では年に一度、三神を祭り伝説をなぞらえた儀式を行います。

 フルーラ「天地怒り世界は破滅へ向かう時、海の神現われ優れたる操り人と共に神々の怒りしずめん。
 サトシ様、アナタが本当に優れたる操り人なら、私たちにその証拠を見せてください。
 …難しいこっちゃないわ。 沖にある三つの島から、三つの宝を持ってきて、本島の祭壇に飾ること。
 そして、私(島の巫女)が神々にささげる笛を…(ルギアの鳴き声)と吹いて、それでおしまい。」

そして実際に三神の怒りをしずめたことのある海の神ルギアが、具体的な三神のなだめかたを教えます。
 ルギア「火の神、雷の神、氷の神の持つ宝が、海の笛と調和した時、彼ら(三神)の怒りはとける。
 それを成し遂げるのは優れたる操り人、人間でなければならない。

 「宝」というのは三つの島の社(やしろ)にある玉のことで、このセリフからそれぞれ三神が所持しているようです。
 「海の笛」とはアーシア島の巫女が神にささげる笛の音の事で、その音色とメロディはルギアの鳴き声に似せて作られてます。
 劇中では宝を本島の祭壇に飾って海の笛を吹く事で、宝と祭壇が光だし、
 凍りついたアーシア島の海は元に戻り三神の怒りはとけ、瀕死だった三神と海の神は元気になります。
 この事から宝自体に相当のチカラが込められている事がわかります。 そして、宝を集めるのは人間でなければならない、とルギアは言います。
 海の底に住むルギアは、三神をなだめる役を自分ではなくポケモントレーナーに任せたいようです。

な、なんだか おぼえる事が多くて疲れたぜぇ…。
ここまでの設定を整理するとこうなります。

・ルギアは星と人類とポケモンの共存を望んでいる。 深層海流に住み、おそらく深層海流を司る。
・三神は星と人類とポケモンの共存には無関心。 自分が支配している島が大事でナワバリを広げたい。
・アーシア島に流れる深層海流は、三つの島をはさんで三つ又に枝分かれしている。
・ルギアが倒れると深層海流そのものがストップして世界は崩壊する。
・三神が三つの島を支配することで、深層海流が和らぎ生命が生きていくのに丁度よい状態を保てる。
・三神が島に居ないとその島を通る深層海流が途切れて世界中の深層海流が変調する。
・三神が倒れても深層海流が途切れて世界が崩壊する。
・三神が複数の島を支配をすると深層海流が変調して自然のバランスが悪くなる。
・三つの島にはそれぞれ社があり三つの宝が置かれている。 三神は宝を大事にしてる。
・海の笛はルギアの鳴き声に似せて作ってある。 海の笛はルギアを慰める。
・祭壇は三つの宝と海の笛を合わせることでフシギなチカラを出す。 祭壇はヤドキングが管理している。
・三つの宝は祭壇と海の笛を合わせることでフシギなチカラを出す。 三つの宝は三つの島の社にある。
・アーシア島には「海の神現われ、トレーナーが三つの宝を集め三神の怒りをしずめる」という伝説がある。
・毎年行う祭りでトレーナーが三つの宝を祭壇に集め、巫女が海の笛を吹く儀式が行われる。
・祭壇に三つの宝を納め、海の笛を吹くことで実際に三神の怒りはしずまる。
・ルギアは三神が暴れても自分だけで事態を解決しようとしない。 ポケモントレーナーに任せたい。
アーシア島地図(方角不明)

この設定を良く考えてみると、いくつかの疑問がでてきます。
シャー! どうして三つの島に三つの神がいるのかがナゾだな。
祭壇は誰が用意したのかもわからないチャモ。
そして、どうして玉を集める役目がポケモントレーナーでなくてはならないのかです。
 この疑問を解決していかないと、物語が意味不明で都合のいいだけの話になってしまいます。

まず、三つの島と三神の関係ですが、上記にあるように三つの島に生息したファイヤー、サンダー、フリーザーは
 偶然お互いの生息場所が接近していたために、お互い影響し合い通常よりも強いチカラを持ち、
 結果としてアーシア島民から神格化され、三つの島は神の住む島として火の島、雷の島、氷の島と名付けられたようです。
つまり神と呼ばれるようになる前から、三匹はアーシア島の三つの島に住んでいたし、
 三匹が三つの島に住んでいたから神と呼ばれるほどの強さを持ったんだな。
では祭壇は誰が用意したのでしょうか? 三神と世界の関係は非常にやっかいなものです。 
 三神はそれぞれがそれぞれの島にいないと世界が崩壊してしまうのに、
 自分達はそれが理解できず、お互いをいがみ合い、他の島を狙っています。 しかし三神が死んでも世界は崩壊します。
 ルギアにとって、三神は永久にナワバリの島で生き続けてくれないと困るのです。
 そこでルギアは三神を神格視するアーシア島民に、三神が争いを起こしたときの対処として祭壇を作らせます。
 祭壇に三神の宝である三つの玉の持つ火、雷、氷のチカラを利用して海水を変化させ、自分の鳴き声を模した音楽で三神の怒りをしずめる仕掛けを作ったのです。
 このため三神の怒りをしずめるのにはどうしても三つの宝と祭壇と海の笛が吹ける者が必要になります。
 三つの島に社を作ったのも、三神の所有物である三つの宝の保管場所を、アーシア島民が決めたかったからだと考えられます。
そういえば、祭壇って人間ではなくてヤドキングが番人をしてたチャモー。


帰りは送ってあげる面倒見のいい神様。
最後に、トレーナーの必要性ですが、玉を集めるだけならばポケモントレーナーでなくても可能です。
 劇中はピカチュウが玉集めを先導してましたし、ルギアが取りにいけばそれで済みます。
 ですが、ルギアはその役目をトレーナーに任せました。 
 これは過去、三神が暴れたときに玉を集めたのが偶然トレーナーだからだったからかもしれませんし、
 人間が強大なポケモンの持つ宝を取りに行くのであれば、ポケモントレーナーがいいという考えかもしれません。
 どちらにしろ、ルギアは暴れる三神をなだめる役は自分ではなくトレーナーに解決して欲しいようです。
海の笛も自分が鳴けばいいだけだもんな。

では、世界観と伝説について理解できたところで、物語の解説をしていきます。
「火の神、雷の神、氷の神に触れるべからず。
されば天地怒り、世界は破滅へ向かう。
 海の神、破滅を救わんと現われん…。
されど、世界の破滅を防ぐことならず。
優れたる操り人現われ、神々の怒りしずめん限り…」
アーシア島の祭壇の石碑に記された伝説です。
人類世界が破滅に向かわないよう警告と、その後どうなったかが記されたものですが、
 こんな伝説を残したから伝説どおりに実行して海の神をおびき寄せようする者が出てきます。

 それがポケモンコレクターのジラルダンです。
 ジラルダンはたとえ世界が滅んでも海の神ルギアをコレクションにしたいのです。
 まずファイヤーを捕獲したことで世界中に異常気象が起きます。

異常気象により、サトシ達はアーシア島へ流されるのですが、アーシア島では年に一度のお祭りが開催されていました。
流されてたまたま着いた島で年一回のイベントってすごい偶然だな。
更に祭りの儀式に必要なポケモントレーナーがいなかったらしく、サトシは伝説にある優れたる操り人役として歓迎されます。
 軽い気持ちで役を引き受けたサトシはさっそく一番近い火の島へ宝を取りに行くのですが、
 そこで雷の島からやってきたサンダーが現われます。

なぜか顔バレのサンダー。


火の島を自分の島にしようと放電する。
火の島で放電するサンダーにピカチュウが話しかけます。
 ピカチュウ「ここはファイヤーの島なのに、どうしてこんなことをするんだ?」
 サンダー「この島の主はもういない。 主がいない以上、代わりにこの島を支配するのは私だ。 ここはもう私の島だ。」

 ファイヤーが火の島からいなくなった事を察知したサンダーが、ファイヤーに代わりに火の島を支配しようとしたのです。
 しかしサンダーもジラルダンによってサトシ達といっしょに捕まってしまいます。
 サンダーが捕まったことで、今度はフリーザーが火の島、雷の島を支配します。
 フリーザーが三つの島を支配した事で、この世界は更に崩れていきます。
飛行宮に閉じ込められた事でサトシ達は、ジラルダンと話します。
ジラルダン「招待状も無しここに来たのはキミ達がはじめてだ。
 いかがかな?火の神ファイアー、雷の神サンダー。 私の新しいコレクション。」
サトシ達は星の影響を与えている生き物を捕獲したことで、
 世界が危機になっていることを訴えるのかと思いきや、カスミが意外なことを言います。


 カスミ「ちょっとオジサン! ポケモンをゲットするならなぜモンスターボールに入れておかないの!? これじゃさらし者だわ!」

なんだかどうでもいいトコに突っ込んできたシャー!
この時点ではサトシ側は三神を捕まえる事が世界の崩壊に繋がっているとわからないので、
 ファイヤー達を逃がせとはいえなかったようです。
 ジラルダン「私はポケモントレーナーではない。 私はコレクターなのだ。 実物をこのまなこで見てこそ、コレクションと言える。」

夜が明けて次の日、フルーラは異常気象の原因は三神が捕まったことだと気付き、
 世界を守るためにファイヤーのオリを壊してファイヤーを自由になります。
 しかしファイヤーはライバルのサンダーが同じ部屋にいるのがガマンならなかったらしく、サンダーに火炎放射をぶっぱなします。
あ、アレはサンダーを助けたんじゃないチャモね。
結局サンダーのオリも壊れてサンダーも自由になったのですが、二匹は怒りに任せて暴れ始め、飛行宮を破壊してしまいます。

飛行宮は雷の島に不時着し、サトシは偶然雷の玉を手に入れます。 そして雷の島上空には三匹の鳥ポケモンが争い始めていた。
 三匹は非常に怒っているらしく、どうして怒っているのかはこの後助けに来るルギアが説明してくれます。
 ルギア「いっしょに住んでいるから、壊してはいけない」 「相手の世界を。 オマエにも私にも、それぞれの世界がある」
 これは三神を捕まえようとしたジラルダンの行為の事でもあるし、
 主がいないことを理由に火の島や雷の島を支配しようとしたサンダーやフリーザーの事でもあります。
 三神はただ暴れているのではなく、三つの島の主がわからなくなったことで、
 彼らは自分たちのナワバリを勝ち取るために争いはじめたのです。
そこで、ルギア様が出てくるチャモね!
でもルギア、三匹から総攻撃を受けて すぐにやられちゃうぜー。
ルギアは三神の気を引きつけているだけですので、サトシを守るとき以外はほとんど攻撃をしていません。
 また、三神の戦いに割って入ったルギアは三神から見ればジャマ者でしかないので、いっせいに攻撃を受けてしまいます。
三神の攻撃に倒れるルギアですが、フルーラの吹く海の笛に元気付けられ持ち直します。
 ルギア「それぞれの世界をあるべき姿に戻すのだ。」
 世界を救う方法、それは祭壇に三つの宝を集め海の笛を吹き、三神の怒りをしずめて それぞれの島に帰す事です。
 そしてこの役目はトレーナーでなければいけません。
 サトシ「オレ、ポケモンマスターにはなりたい。でも、世界を救うなんて」 カスミ「がらじゃないこと、わかってる」
 サトシ「でも、このオマツリでやることって難しくないって…」

 最後の宝がある氷の島は三神が戦っている戦場になっていました。
 宝を取りに行くのは命がけです。 ですが、ピカチュウ達ポケモンに励まされ宝を取りに行くことを決意します。
 サトシ「オレってお調子者だからな、カスミ、ケンジ、フルーラさん、世界を救いに行くぜ。 行ってやろうじゃんか!
なんでフルーラだけ、さん付け!?

自分の役目を悟ったフルーラ。
ルギアに守られて、氷の宝を手に入れるサトシですが、
 本島に戻る途中でジラルダンの攻撃を喰らい、ルギアと共に海に落とされます。
 ルギアがチカラ尽きた事で海は更に荒れますが、なんとかサトシは救出されて、
 宝を本島の祭壇に集めることができました。
 そしてフルーラが海の笛を吹くと、緑色に光る水がアーシア島の海をおおい、
 海の音のメロディに合わせる様に祭壇の石柱が輝きます。
 光を浴び海の音に耳を傾けた三神の怒りはとけ、海に沈んだルギアが復活しました。

緑色に光る水。


アーシア島域の異常現象は元に戻り、ルギアはサトシを乗せて三神といっしょに海上を飛行し、海を割って深層海流を天空に呼び寄せます。
そしてルギアは深層海流を海中に戻し、三神はそれぞれの島に帰っていきました。



ルギア「私が幻であることを願う。 それがこの星にとって幸せなことなら。」
そう言うと、ルギアは星の幸せを願い、再び海の底に沈んでいきます。
全てが終わった後、心配の余りオレンジ諸島にやってきたママがサトシを叱ります。
 ママ「なんて危ないことしするの!」 カスミ「でもサトシは世界を救ったんですよ」
 ママ「世界を救う?命がけでする事? サトシがいなくなったらサトシの世界はないの。 私の息子はもういないの。
 アナタがいるから世界はあるの。 サトシ、アナタはこの世界で何をしたかったの?」
 サトシ「オレはポケモンマスターに…」 ママ「だったら無茶せずにそれを目指しなさい」 サトシ「…だよねっ」
以上でルギア爆誕のストーリィは終了です。
うん、最後なに言ってるのか意味がわからない。
ルギアやファイヤー達がやってることは理解できたけど、ママの言うことはわかんないチャモ。
たしかにママの言うセリフはサトシがした事を否定しているようで、矛盾を感じます。
ママのセリフを理解するには、この作品が伝えたかった事がなんなのか知る必要があります。
最初のほうにも言いましたが、人間の干渉で星のバランスが崩れていくという物語は、そのまま環境保護を訴えています。
ですが、それだけではママのセリフはわからずじまいです。
ルギアの言う相手の世界や、ハナコの言うアナタの世界、サトシが救った世界と、この話は世界規模のスケールでたくさんの世界が出てきます。
この作品が伝えたかった事はそういった無限にに存在する「たくさんの世界」ではないでしょうか。
自然をファイヤー、サンダー、フリーザーという生き物に具象化したことで、
 世界の中にも人・ポケモン・自然とたくさんの世界があることがわかります。
 どうして三神が暴れているのかを聞かれたルギアは答えます。

 サトシ「すごいね。 ほんとにポケモンなの?」 ルギア「そう、この星にみんなと住んでいるポケモン。」
 サトシ「でも、どうしてこんなことに?」 ルギア「いっしょに住んでいるから壊してはいけない。」
 サトシ「何を?」 ルギア「相手の世界。 オマエにはオマエ、私には私。 それぞれの世界がある。」 サトシ「うん。」

 自分が世界を持っているように、どんな相手も世界を持っている。
 それらが全て同じ世界に生きているからこそ、相手の世界を壊さないこと。
 ルギアの言う優れたる操り人は、そんな相手の世界を壊さないポケモントレーナーなのかもしれません。

一方的な捕獲はやめましょう。


自分のやることをやる。 それが大事。
そして最後に、サトシのママが「世界を救うなんて命がけでするな。
 自分のしたかったことを無茶せずにやれ」とサトシを叱ります。
 世界があるからサトシがいると同時に、サトシがいるからサトシの世界がある、
 世界よりも自分の世界を大事にして欲しい。 当然母親としての感情も混ざった言葉ですが、
 誰もが相手の世界を壊さずに自分のやりたいことをして、それだけで世界が調和するのなら、
 世界のために命なんてかけるものではないのかもしれません。
 だからこそ、「命を掛けて、かかってこい」というキャッチフレーズは
 作品のテーマについて考えるキッカケとなるべく用意された、反対の主張だと言えます。

最後に、「ルギア爆誕」のサントラにはルギアの世界を歌詞にした歌が入っています。
ルギアの事の気持ちわかる歌なので、少しだけ引用として掲載させていただきます。
「果てしない世界」 作詞・湯山 邦彦 歌・平松 晶子

海 空 太陽 翼を広げ いつか夢見てた 果てしない世界 
波に揺らめき今はまどろむ

吹きすぎる風は この星の息吹 陸から陸への 距離を埋めて
打ち寄せる波は この星の鼓動 幾億年もの 時を越えて
私は祈る あの水平線に 永遠のときが 舞い降りることを

海 空 太陽 翼を広げ いつか夢見てた 果てしない世界
波に揺らめき 今はまどろむ

[ルギア爆誕オリジナルミュージックコレクションより]

お読みいただいてありがとうございました。


次回はたぶん結晶塔の帝王を取り上げる予定です。



ミュウツーの逆襲ルギア爆誕