「クレジットカード保有枚数は1人3枚、3億枚市場」は業界の“常識”ではなかった――。
日本クレジット協会(東京都中央区、大森一廣会長)が昨年末に訂正した統計について業界内で物議をかもしている。過去10年分のカードの発行枚数と取引額などの統計数値が大幅に下方修正され、長年誤った数値を公表し続けたずさんな管理体制が発覚した格好だ。クレジットカードといえば信用取引の代名詞のような存在だが、そのおひざ元で信頼が根本から揺らぎかねない事態を招いた背景には業界特有の事情があった。
「だましだましの集計に限界がきたのではないか」――日本総合研究所の岩崎薫里・上席主任研究員は、今回の統計訂正についてこう指摘する。
日本クレジット協会は、昨年12月26日、クレジットカードの利用額や発行枚数などの過去10年分(平成15年〜24年)の数値の訂正をホームページにひっそりと掲載した。例えば、カード利用額は24年の53兆2541億円(前年比7.4%増)から40兆6863億円(同7.7%増)に修正。発行枚数(25年3月末時点)も3億2352万枚(同0.6%増)から2億5979万枚(同0.2%減)といずれも大きく減少した。発行枚数にいたっては微増傾向から、実際は3年連続で前年割れしていることが新たに分かるなど、統計の信ぴょう性に疑問符がついた格好だ。
クレジットカードに関する統計は、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査などがある。だが、協会の統計は全国の主要カードをほぼ網羅し、カード業界や官庁、大学や研究機関など幅広く活用され、事実上日本最大だ。大がかりな訂正を余儀なくされたにもかかわらず、記者会見は開かれず「御用納めの日にどさくさに紛れて」(業界関係者)公表したようにも映る。公表のタイミングについて協会側は「統計の精査に時間がかかり、いち早く公表することを最優先にしたらその日になった」と説明する。
協会によると、統計修正のきっかけは、
の、計3点を理由に一昨年以降、統計の見直しを検討。その過程で経産大臣の指定信用情報機関であるシー・アイ・シー(CIC)のデータと協会の統計を照合したところ、市場規模が大きく異なっていることが判明した。同協会は原因について「一部企業が報告するべき数値を間違えていた」としている。
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