志布志事件:「検察、漫然と起訴」2訴訟で賠償命令

毎日新聞 2015年05月16日 01時08分(最終更新 05月16日 02時45分)

 2003年4月の鹿児島県議選を巡る選挙違反事件(志布志事件)で、取り調べを受けた住民7人が県に計2310万円の損害賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁(吉村真幸裁判長、川崎聡子裁判長代読)は15日午後、うち3人に対する捜査の違法性を認め、県に184万円の賠償を命じる判決を言い渡した。判決は「容疑が十分でない逮捕や、限度を超えた取り調べがあった」と述べた。

 同日午前には、無罪が確定した元被告ら17人が国と県に2億8600万円を求めた訴訟で、同じ裁判長が県警と検察の違法性を認め、双方に総額5980万円の支払いを命じる判決を出した。県も国も全面的に争ったが、虚偽の自白を引き出した県警の取り調べを「限度を超えている」と批判。捜査を指揮・監督する検察についても「漫然と起訴・公判を継続し、到底合理性はない」と結論づけた。

 県警と検察は、本来秘密を守るべき弁護士との面会(接見)状況を元被告らから聞き取り、70通以上調書にした。これについても午前の判決は「行き過ぎで違法」と述べた。

 午後の判決では、7人のうち逮捕された男性(後に不起訴)について、前提となっている他の元被告らの自白が虚偽だったことから「容疑は相当低く、強制捜査は違法」と指摘した。さらに、他の2人の女性に対する取り調べについて、大声で怒鳴り机をたたき侮辱的な発言をしたり、取調室の窓から大声で叫ばせたりしたことを問題視し「社会通念上許されない」と違法性を認めた。

 残る4人については取り調べ状況について「証言が移り変わっていたり、不自然だったりする」として請求を棄却した。【鈴木一生】

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