安保法案:本当に撃てるのか…防衛大卒55歳記者は聞いた

毎日新聞 2015年05月15日 07時30分(最終更新 05月15日 10時42分)

PKOの南スーダン派遣で家族や同僚に見送られ、搭乗口に向かう隊員たち=新千歳空港で2014年5月、野原寛史撮影
PKOの南スーダン派遣で家族や同僚に見送られ、搭乗口に向かう隊員たち=新千歳空港で2014年5月、野原寛史撮影

 米陸軍元中佐のデーブ・グロスマンは著書「戦争における『人殺し』の心理学」で、まず「人には、人を殺すことに強烈な抵抗感がある」と指摘する。同書によると、第二次大戦で米軍兵士が敵に向かって撃てた発砲率は15〜20%だった。その後、敵を非人間視させる訓練法などにより、朝鮮戦争で55%、ベトナム戦争では90〜95%に高まった。実際に撃った兵士が、後に命じた指揮官よりも重いトラウマ(心的外傷)に苦しむという。

 自衛官は本当に、撃てるのか−−退官した同期生に私は聞いてみた。「やるさ。おれたちはこれまでずっとキツいことやってきた」。政治が決めたことに従うのは当たり前だという。そして、最後にこう言い添えた。「60年遅れで、自衛隊は米軍に追いつこうとするんだろうな」

 防大に入学した青年の、まっすぐなまなざしを思い出す。起床ラッパで一日が始まる生活に、もう慣れただろうか。母の不安げな表情も浮かんだ。

 歴史を見れば、軍が変わる方向に社会の意識も変容する。自衛隊の変化に私たちは無関心でいてはならない。この新法制には国民的な合意がどうしても必要だ。まもなく始まる国会審議を、私は凝視する。

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