最期の塔
夏居暑
Spoonerizm-Novels
2013-07-27


いや~ブログ書くの久しぶりです。実に一ヶ月ぶりくらいです。
久しぶりのブログ、記事は夏居暑さんの本の紹介です。

夏居さんの《最期の塔》 表紙を眺めていて、そういえば、きんどう杯? 
きんどうさんが主催する何かのイベントで、表紙で買いたくなる本というコーナーで
そういえば夏居さんの、この表紙に投票したのを思い出しました。
これも何かの縁ですかねえ。不思議な巡り合わせを感じています。

あれから一年くらい経過したのでしょうか?
時が経つのは本当に早いものです。歳月は人を待ってくれませんね。

さて、この本のレビューをこれからするわけですが、レビューは、
基本的に本の良いところを探す作業だと思っています。
最期の塔はパーフェクトで、描写もすぐれていて、もちろん
非の打ち所がないですが、レビューというのは、引き算で、
ここはダメだ。これもダメだ。だめ出しをするのではなく、良いところの
発掘する場所だと定義したい。作家にも新鮮な驚きを提供できるような
そんな場所でありたいと思う。

これは子育てにもあてはまりますし、会社の部下との関係にも
あてはまります。《おまえはダメだ。どうしてこんなこともできないなんだ?
つかえない、ダメな奴だ》 そう言って部下を育てる人がいるとすれば、
それは大きな間違いです。子供もそうですが、ほめて育てる。ほめて伸ばす。
ほめて自信を持たせる。それが教育だと思っています。

さて、肝心の夏居暑さんの《最期の塔》ですが、まずは描写がすぐれていますね。
筆力も、プロの作家並で、いつ紙本化されてもおかしくない
レベルの本だと思います。読解力のない私みたいな読者には、難解な本
かもしれません。どこかミステリアスで、異色の輝きがあります。

塔が自分の人生、自分の心(内面)を映し出す鏡になっているのかなあとも思いましたが、
私にはテーマが難しすぎて、全体像をうっすらと把握することくらいしかできませんでした。
巻末に載っていた作品解題に関わるヒント…こちらも読ませていただきましたが
細かい描写にそれぞれ意図的に意味をもたせていたんだなあとわかるだけで
文学少年ではない私には意図の裏側まで読み解くことができませんでした。

巻末にヒントを載せたのは、とても良い試みだと思います。
本を理解できない人に、もっと奥深い、意図的な試みがなされていることを
知らせる意味でも有効なのではないかと思います。本を理解できないのは
読む側の能力の問題だということがよくわかります。どちらかといえば
素人好みではなく、玄人受けする本でしょう。

つまり、この作品を理解できる人は、夏居さんと同じくらいの作家能力を有する人で、
またはそれ以上の読解力を持つ人に限られるということです。
人というのは自分以下のものには理解を示せても、それ以上のこと、
能力以上のことには理解を示せない。

読者はこの本のテーマ、仕掛けが難解なので、作者と同じレベルで
読書を楽しむことができないかもしれません。しかし描写そのものを読み解き、
この作家がただ者でないこと、すぐれた作家だということは
誰にでも理解できるのではないでしょうか?

電子書籍を読み、心を打つ本はたしかに少ないですが、この本はある意味、
わたしの能力を超えた、はるか先を歩いている、未知なる本だと思いました。
川端康成の羅生門を20歳で読んだ時のような、不思議な気持ちになりました。

もしあなたが、作品解題に関わるヒント、すべてを読み解くことができたなら
あなたは夏居暑さんを超えていることになる。残念ながら私は、夏居さんのレベルまで
達していないようです。話のもっと奥深くにある根底の部分を把握することが
できませんでした。

読書好きな方、本をたくさん読むヘビーな方に、ぜひ読んでもらいたい作品ですね。
あなたが作家として、読書家としてどれくらいの位置にいるのか、
この本が教えてくれると思います。素敵な本、素敵な時間をどうもありがとうございました。
未知なる領域に触れることができ、とてもうれしく思います。私の想像を超えた
前衛的な作品だと思います。