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資格停止で太地困惑 世界動物園水族館協会

ハナゴンドウの追い込み漁を行う漁師ら=昨年9月、和歌山県太地町の畠尻湾で

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 世界動物園水族館協会(WAZA)が、和歌山県太地町の追い込み漁で捕獲したイルカを入手していることを理由に、日本動物園水族館協会(JAZA)の会員資格を停止し、二十一日までに改善しなければ除名すると迫っていることに対し、同町では驚きと困惑が広がっている。

 同県水産局資源管理課によると、太地町では昨年九月一日から今年四月末までの追い込み漁の漁期に、バンドウイルカなどの小型鯨類千百四十頭を捕獲し、うち八十四頭を展示用として生きたまま国内の水族館などに売却した。展示用イルカは食肉用よりも単価が高く、漁師の収入源の柱となっている。

 WAZAは太地町のイルカの捕獲方法が倫理規定に違反するとして以前から問題視していたが、太地町漁協によると、昨年八月にWAZAからの要請を受け、JAZAに加盟する水族館に売却するバンドウイルカを捕獲する場合は、残った個体を海に返す▽イルカのストレスを少なくするため、小さな群れから生け捕りする−ことで決着したという。

 その後、反捕鯨団体が今年三月に「WAZAがイルカの追い込み漁を事実上容認した」として、WAZAの本部があるスイス・ジュネーブの裁判所に訴訟を起こしていた。

 今回のWAZAの決定について、太地町の三軒一高町長は「反捕鯨団体からの圧力が強く、従わざるを得なかったのではないか」と指摘。和歌山県の仁坂吉伸知事も十三日の記者会見で「世界中からいじめられているような気がする。フェアに考えてもらいたいが、考える能力のない組織かもしれない」と厳しく批判している。

 JAZAは加盟する動物園八十九館と水族館六十三館の意見を聞いた上で、二十日の理事会で最終判断を下す予定。動物園は希少動物を繁殖する際にWAZAとの協力が欠かせず、一方、水族館の多くは太地町からイルカを入手できなければ経営が立ちゆかなくなることから、分裂の可能性が高まっている。

 (井上喜博)

 

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