起業のきっかけ
「ヘアケア製品は自分達で試して、良いと実感できたものだけを販売しています」と話すああ!頑張ります!株式会社、代表取締役社長の樺沢さん。
「自分自身が髪で悩んでいたことが起業のきっかけです」
24時間オープンのヘアケアサロンと業界最安値のヘアケア商品販売をおこなっている、ああ!頑張ります!株式会社。代表取締役社長の樺沢潤さんは、経理・会計・法務に特化した人材派遣会社に在籍し、ウェブマーケティングを担当していた。
「自分で言うのもなんですが、毎日15時間以上、土日も出社していたほどの猛烈社員でした。そのためどうしても不健康な生活になりがちでした。そんなある日、同僚から髪が薄くなったと指摘されてとてもショックを受けました」。
もともと凝り性だった樺沢さんは、髪のことに関する書籍を40冊ほど読破し、育毛剤やヘアパックを自作してみたり、運動も大切だと毎日会社までジョギングしたり、さらに大手のヘアケアショップへも行くなど徹底的に取り組んだという。「その経験の中で、不満に感じる点も含めて色々とビジネスアイデアが膨らんでいきました」。
学生時代から起業したいという思いはあったものの、これといった起業アイデアに出逢えず踏み出せなかったが、経験から得たヒントは起業への強い動機になったと樺沢さんは話す。「ヘアケアは20代の人間にはとても払える金額ではないと痛感しました。でも、若い時に髪で悩むと人生のスピードがその時から落ちてしまうような感じがするんです。だから少ない金額で忙しい会社員に髪の面で手助けをしたい、そう思いました。私は責任をもって一生の仕事にできるものをやりたいと思っていましたから、良いきっかけになりましたね」。
事業と会計
樺沢さんはドリームゲートが主催している日本最大級の起業応援イベント「大挑戦者祭」で事業計画をアピールし、2006年度の優勝者となった。
「起業当初から自力で弥生会計を使い処理して行こうと決めました」
樺沢さんは、以前、会計アウトソーシングの会社に在籍していたこともあり、市販の会計ソフトについての知識はあったが、会計実務を担当していたわけではなかった。
「ヘアケアで起業しようと決めてからは、会社を起こすにはどうしたら良いのか本格的な勉強を始めました。当然、会計が重要なことはわかっていましたが、処理をどうしようと考えました。正直に言うと面倒くさいものだという意識が強かったですね(笑)」。
当時の樺沢さんの周囲には会計のプロが多く、会計について質問したところ、起業当初は自力で処理した方が良いとアドバイスを受けたことと、コスト的にも自力で処理した方が良いだろうという判断で、仕事のかたわら簿記の勉強をし、会社にあった会計ソフトを操作するようにしたという。
「弥生会計を選んだのは利用者が一番多い点と、実際に操作してみて使いやすいと感じたからです。経営セミナーなどではエクセルで充分だという話がでることもありますが、弥生会計は本当によくできていて、価格的にも高いものではありませんし、本当に使いやすいと思いますよ」。
起業してからは毎日入力しているが、難しく感じたことはないと話す樺沢さん。さらに、経営者自身が入力することについて「経営者になるためには、そんな細かいところは会計事務所に丸投げしてしまって、商売に専念するべきだと意見されたこともあります。でも、自分の会社の帳簿もつけられないような経営者にはなりたくないですし、経営者自身が会計処理できるメリットがあることも解るようになりました。会社員から起業して、会社全体のことを把握し、経営者として成長するためには必要な経験だと思います」と語ってくれた。
会計データを事業へ活かす
ああ!頑張ります!株式会社はヘアケア製品のショップとヘアケアを施術する部屋に分かれている。
「起業して数ヶ月ですが、会計データは事業にフィードバックして活かすものだと実感しています」
ああ!頑張ります!では業界最安値をアピールポイントにしているが、無理な割引はせず、利益を確保しながら顧客に喜んでもらえる方法を常に考えている。
「そのために、特別なことではありませんが、損益計算書と貸借対照表から粗利益を出して経営面に反映させています。他には、損益計算書で現在の資金の流れがどうなっているかを確認し、キャッシュフローのことを考える時の資料にしています」。経営状況は会計処理をしなくても把握はできるが、勘ではなく具体的な数字で判断を下すスタイルは、マーケティングを担当していた前職の経験が活きていると樺沢さんは分析している。
樺沢さんは2006年に、ドリームゲートという起業家支援プログラムが実施している日本最大級の起業応援イベント「大挑戦者祭」で事業計画をアピールして優勝した実績がある。
「あれから色々と声をかけて頂くことが多くて、ベンチャーキャピタルからの投資を受け入れることも考えています。今は起業したばかりで事業を採算ベースに乗せることがメインですが、もうエンジェル支援とか個人投資家からは、そういう話が来ています」。
樺沢さんは、支援を利用することになれば決算データを見せる必要があるので、会計処理をしっかりしておくことは大切だと話しながら、借り入れた資金の有効活用や返済プランを考える上で、現在の経営状態を把握しながら将来の予測をする上でも会計データは重要だと強調する。
「実は、起業した当初、銀行からの融資と自己資金を合わせて、最初からある程度、大きな規模で開業しようと考えていました。事業計画書から資金繰り計画書、利益率も全部出して融資を受ける直前まで行ったのですが、いざ商売を始めてみたら計画通りには行きそうもないことがわかって、融資を受けるのは自分で取りやめました。返済が大変だということもありますが、せっかく借り入れたお金が無駄になってしまうことは避けるべきだと考えました。その時の経験で、経営状況を正確に把握し予測することは大切だと分かりました」。
弥生会計は今だけでなく、これからも使っていけるソフト
樺沢さん(左)とヘアスタイリストの小林さん(右)。ああ!頑張ります!株式会社は女性客が大半をしめている。
「今の実感としては、弥生会計を使いながら、経営者として成長しているという感じです」
ああ!頑張ります!は、事業としての特色を出すため、業界最安値とともに24時間オープンを実施している。樺沢さんは事業所内で毎日寝泊まりしているなど多忙を極めているが、弥生会計への入力は毎日おこなっている。「売上だけは毎日レジを締めてから入力し、大きなお金の動きがあった時も必ずその日のうちに処理しています。2、3日放っておいたこともあるのですが、仕事をしながら、どうしても気になってしまって集中できなかったことがあります(笑)。弥生会計に数字を入力するということは、頭の中に残っていた気がかりな部分を吐き出せるという感じです。今は1日の区切りになっていますね」。
樺沢さんは、簿記の勉強をしていた当時、紙の上で仕訳をするよりも弥生会計で実際に入力しながらの方が覚えやすかった経験があり、日々入力している現在も操作の簡単さを実感していると話す。「仕訳アドバイザーがとにかく便利ですね。基本的なことはほとんど解決します」。事業登録をする際など、若干の知識を必要とする部分は、弥生会計を使っている知人や税務署などに質問しているため困ったことはないという。また、データを管理する面でも現在の入金状況を確認する際など、便利さを感じていると評価している。「現在、口座はメインバンクと、インターネット取引をやっているのでネット決済用の口座、郵便局と、3つ持っているのですが、そうなると、どこのルートからお金が振り込まれるかを、すぐに把握できるようにしておきたいので、補助科目を使って一目でわかるように設定しています。確認したいデータをすぐに見られるのは余計なストレスを抱えなくてすみますから、便利ですね」。
ああ!頑張ります!は、数年以内の多店舗展開を計画しており、樺沢さんは、今後、本格的な経営の道へ進みたいと考えている。「今はまだ経営者になるための階段を登っている途中ですから、弥生会計を使いながら成長しているということですね(笑)。もう少し余裕ができてきたら、今度は経営のプロにならなければいけませんから、その時には会計処理を外部へ委託するとか、専任のスタッフを雇うことになると思います。でも、以前に在籍していた会社で見ていた感想として、弥生会計は中小企業に限らず、もう少し規模が大きい会社でも充分に使えるという印象でした。事業所登録すれば連結決算だってできますから、これから先店舗数が増えて行っても、弥生会計を使って行けると実感しています」。