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韓国経済が崖っぷちに立たされている。「円安ウォン高」が加速し、輸出の減少が止まらず、サムスン電子や現代自動車までが大幅減益に見舞われているのだ。急激に進む所得格差の拡大と、有効な対策を取れない朴槿恵(パク・クネ)政権。10人に1人が最低賃金未満で働く同国では、今後、壮絶な所得の奪い合いが始まるという。経済評論家の三橋貴明氏が、隣国の暗部に迫った。
サムスン電子、現代自動車など、韓国経済の屋台骨である大手輸出企業が、軒並み減収減益にあえいでいる。最大の理由は、もちろん4月28日に一時は1円=9ウォンを割り込んだ円安ウォン高である。
東日本大震災後の2011年10月、円ウォンの為替レートは1円=15・6ウォンであった。その後、4年も経過しないうちに、約75%もの円安ウォン高が進んでしまったことになる。
韓国の1−3月期の輸出は、前年同期比2・9%減少、4月は同8・1%の減少であった。何しろ、韓国の財の輸出は対GDP比で40%を超える。日本とは異なり、正真正銘の「外需依存国」である韓国にとって、ウォン高や輸出の縮小は国民経済を直撃せざるを得ないのだ。
経済のエンジンである輸出が縮小すると同時に、韓国は国内の所得格差が拡大していっている。特に着目すべきは、企業の規模による所得格差だ。韓国労働研究院によると、14年における韓国の中小企業(従業員300人未満)の平均賃金は、大企業(従業員300人以上)の56・7%に過ぎなかった。04年は59・88%だったため、企業規模による所得格差が拡大していっていることになる。
上記は正社員同士の比較だが、非正規社員となるとさらに悲惨だ。中小企業の非正規社員の平均賃金は、大企業正社員の40・7%。やはり、04年時(41・6%)と比べて格差が拡大している。