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動物園・水族館 イルカ巡り会員資格停止
5月9日 17時41分

動物園・水族館 イルカ巡り会員資格停止
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国内のおよそ150の動物園や水族館で作る団体が加盟する国際組織から、一部の水族館が「追い込み漁」で捕獲されたイルカを入手していることが倫理規定に違反するとして会員資格を停止され、改善されなければ、除名にすると通告を受けたことが分かりました。団体はすべての施設に意向を確認したうえで、対応を判断することにしています。
「日本動物園水族館協会」によりますと、加盟しているおよそ30の水族館の一部では和歌山県太地町で行われている「追い込み漁」で捕獲されたイルカを入手して飼育しています。
この入手方法について、団体が加盟する国際組織の「世界動物園水族館協会」から団体に対し、先月21日付けで倫理規定に違反するとして会員資格を停止され、1か月以内に改善されなければ除名にすると通告を受けたということです。
国内の水族館ではイルカの人気が高く、繁殖する設備を持つ水族館が少ないことから、通告に従い太地町で捕獲されたイルカが入手できなくなると、運営にも影響が出る懸念があるということです。
一方で、国際組織から除名されると海外から希少動物などを繁殖する協力を得られなくなる可能性があるということで、団体は加盟しているすべての施設に意向を確認したうえで、対応を判断することにしています。
「日本動物園水族館協会」は「これまでも『追い込み漁』がイルカに負担をかけないように改善することや、繁殖に力を入れることなどを説明してきたが、認めてもらえなかったのは残念だ」としています。

世界動物園水族館協会とは

世界動物園水族館協会はスイスに本部がある国際組織で、50の国や地域の300を超える動物園や水族館などが加盟し、希少動物の種の保存事業などに取り組んでいます。
組織に加盟している動物園などの間では国際的な交流が促され、繁殖のために動物を交換するといった協力関係が構築しやすくなる利点があります。
加盟にあたっては動物の入手や展示の方法などについて組織が定める倫理規定に同意することが必要とされています。
日本動物園水族館協会は22年前、今の組織の前身に当たる世界動物園水族館機構に団体として加盟しています。

追い込み漁とは

「追い込み漁」は和歌山県南部の太地町でイルカや小型のクジラを捕獲するために行われている漁法です。
漁は県の許可を受けて毎年9月からおよそ半年間行われ、複数の漁船で音を立てながらイルカなどの群れを入り江に追い込み、捕獲します。
「追い込み漁」を巡っては、漁を批判的に描いたアメリカの映画「ザ・コーヴ」が5年前にアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門を受賞して以降、環境保護団体などによる抗議活動が激しくなっています。

「問題うまく解決してほしい」

「日本動物園水族館協会」に加盟している名古屋市の東山動物園も、国際組織から除名された場合、繁殖のための海外との連携に影響が出るおそれを懸念しています。
日本動物園水族館協会に加盟する名古屋市千種区の東山動物園は、絶滅危惧種のスマトラトラを園内で繁殖させる取り組みを5年前から続けています。
これは「世界動物園水族館協会」が進める国際的なプロジェクトとして行っているもので、カナダの動物園などから雄と雌1頭ずつの合わせて2頭を借りています。
東山動物園によりますと繁殖には、まだ成功しておらず、国際組織から除名された場合、海外の動物園との情報交換や動物の借り受けなどで影響が出るおそれがあるということです。
東山動物園の黒邉雅実副園長は「動物園の社会的な使命は展示だけでなく、種の保全にも積極的に関わることだ。絶滅危惧種の繁殖は海外との連携が欠かせず、世界動物園水族館協会から除名されると貴重な機会を失うことになりかねい。問題をうまく解決してほしい」と話していました。

「水族館も繁殖に努力を」

世界動物園水族館協会からの通告について、動物園の運営に詳しい北海道の旭山動物園の前の園長、小菅正夫さんは「日本を含む世界の動物園は希少な動物の種の保存や遺伝的な多様性を失わせないために、動物の交換などによる繁殖を頻繁に行っているが、国際組織から除名されれば、こうした枠組みに入れなくなるおそれがある。希少な種の保護や繁殖の計画を決める国際会議などに日本の協会が出られなくなるおそれもあり、除名されれば日本の動物園にとって打撃となる」と話しています。
そのうえで小菅さんは、「日本では動物園の90%余りが繁殖させた動物を飼育しているのに対して、水族館ではイルカを含めて繁殖活動があまり行われていない。今回指摘された捕獲方法より、安易に野生の生き物を入れるという発想に問題があり、日本動物園水族館協会は水族館でも繁殖に向けて努力するという姿勢を示して、国際組織に残るべきだ」と指摘しています。

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