志布志事件:国と県に賠償命じる…鹿児島地裁判決

毎日新聞 2015年05月15日 10時07分(最終更新 05月15日 10時52分)

勝訴の垂れ幕を掲げる支援者=鹿児島市で2015年5月15日午前10時4分、須賀川理撮影
勝訴の垂れ幕を掲げる支援者=鹿児島市で2015年5月15日午前10時4分、須賀川理撮影

 2003年4月の鹿児島県議選を巡る選挙違反事件(志布志事件)で無罪が確定した元被告ら17人が、2億8600万円の損害賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁(吉村真幸裁判長、川崎聡子裁判長代読)は15日、国と県に総額5980万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 志布志事件を巡る07年の鹿児島地裁の無罪判決(確定)は「強圧的な取り調べがうかがわれる」と指摘したが違法性について言及しておらず、最大の争点は捜査の適法性だった。

 原告は、公職選挙法違反(買収・被買収)で起訴された元被告13人全員(うち2人は死亡)の本人か遺族。初当選した中山信一元被告側が4回の会合で現金計191万円を渡して買収したという起訴内容だったが、原告側は「会合は4回とも存在せず、事件は県警の組織的なでっち上げ」と主張。「もともと嫌疑自体がなく、予断と偏見に基づき捜査対象とした。長時間の取り調べをし、誘導やどう喝によって嘘の自白を強要して逮捕した」と訴えていた。

 元被告らは最長395日身柄を拘束され、期間中の金銭的償いとして最高約500万円の刑事補償を受けた。今回の裁判は真相解明と精神的な苦痛に対する慰謝料などを求めるもので、無罪確定後の07年10月、提訴。しかし捜査資料の一部は開示されず、捜査員ら約20人が証人として出廷するなど7年半を超える長期裁判になった。志布志事件や氷見事件などで取り調べの問題が指摘され、一部の事件・過程で取り調べの録音・録画(可視化)が導入された。【鈴木一生】

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