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 お笑い芸人たちも論戦の盛り上げに一役買っている。17日に迫った、大阪市をなくして五つの特別区を設けるいわゆる「大阪都構想」の住民投票。結果は「お笑い100万票」の言葉を生んだ、大阪の中心部の将来像に直結する。笑いは市民の理解を助けるか。

■勉強ライブ「知恵熱出た」

 大阪市在住のお笑い芸人たむらけんじさん(42)は13日夜、市内で「大阪都構想勉強LIVE」と銘打った参加無料のイベントを催した。定員300人弱のホールは、若い男女らでほぼ満席だったという。

 開催の2日前、自身のツイッターから呼びかけた。

 「未来の大阪を背負う若者達一緒に勉強しよう! 無関心はかっこ悪いで!」

 参加者によると、イベントはこんな様子だった。

 キャスターの辛坊治郎さんが都構想を解説。生徒役のたむらさんら芸人や落語家に加え、参加者の質問にも答えていった。

 「二重行政の有無」を問われた辛坊さん。ヨットで太平洋横断中に遭難した「自虐ネタ」に触れ、「バブル期、ヨットハーバーを市と府がつくった。二つも要りますか?」と投げかけた。また、大阪府枚方市に住む辛坊さんが「投票権がある人がうらやましい」と言うと、たむらさんは「ネットで探しても売ってないですからね」と突っ込み、会場を沸かせた。

 2時間の長丁場で、笑いよりも、うなずく参加者が多かったという会場。ノートを手に登壇した女性芸人は「スタート地点に立てたけど、『知恵熱』が出た」と苦笑していた。

■集会・演説も軽妙に

 先月28日、共産党が加盟する政治団体が主催した大規模集会には、コント集団「ザ・ニュースペーパー」の2人が登場。橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)と小泉純一郎元首相に扮して、コントを披露した。

 「二重行政、二ついらないんですよ。通天閣の隣にもう一つ通天閣あったらどうですか、小泉さん」

 「それうれしいねえ。なんか楽しいねえ。ツインタワーみたいで」

 軽妙なやりとりに参加者から大きな笑いが起きた。

 橋下氏は住民投票で都構想案が否決された場合、政界を引退すると表明している。橋下氏に扮した福本ヒデさんが「みなさんに頑張っていただいて、私に二度と橋下さんの役をやらせないで下さい」と呼びかけると、会場がどっと沸いた。

 今月13日、同じ政治団体が大阪・難波で開いた街頭演説会には、落語家の笑福亭竹林(ちくりん)さんが登場。橋下氏が都構想実現で五輪が誘致できるようになるとアピールしていることについて「都構想でオリンピックが大阪にくるって、どこに根拠がありますのん。そこまで言うんやったら、『都構想で阪神優勝します』ぐらいのことゆうてみい」と話し、聴衆の笑いを誘った。(野上英文、太田成美)

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 〈大阪の「お笑い100万票」〉 タレントの西川きよし氏が参院選大阪選挙区で1986年から3回連続で約100万票を得てトップ当選を果たしたことから生まれた言葉。無党派層の「風」がタレント候補を押し上げ、政党の歯が立たない状況を指す。参院議員から大阪府知事に転身した横山ノック氏(故人)や、タレント弁護士から府知事選に初当選した橋下徹大阪市長も似た例に挙げられる。