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 2003年の鹿児島県議選をめぐり、公職選挙法違反の罪に問われた被告全員の無罪が確定した「志布志(しぶし)事件」で、鹿児島地裁の吉村真幸裁判長(川崎聡子裁判長代読)は15日、捜査の違法性を認め、元被告らに損害賠償を支払うよう、県と国に命じる判決を言い渡した。

 元被告13人は同県志布志市内での会合で現金を授受した公選法違反(買収・被買収)の疑いで逮捕、起訴されたが、地裁は07年2月、12人全員を無罪とした(1人は公判中に死亡)。元被告とその遺族の17人が「違法な捜査で心身に苦痛を受けた」として同年、国と県に計2億8600万円の支払いを求める国家賠償請求訴訟を起こしていた。

 元被告側は訴訟で、県警が十分な嫌疑もないまま長時間身柄を拘束して自白を強要する違法な取り調べをしたと主張。地検も必要な裏付け捜査を怠ったと指摘した。一方、県や国は「情報提供にもとづき、適法・適正に捜査した」と反論し、証人尋問で捜査幹部も違法な捜査を全面的に否定していた。

 志布志事件をめぐっては、警察が描いた事件の構図通りに強引に容疑を認めさせる「たたき割り」や、捜査員が家族の名前などを書いた紙を踏ませる「踏み字」といった捜査手法が問題化し、最高検や警察庁が冤罪(えんざい)の再発防止策などをとるきっかけとなった。

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 〈志布志事件〉 2003年4月の鹿児島県議選で初当選した県議が妻らと共謀して、同県志布志市で買収するための会合を開き、住民との間で計191万円の授受があったとして、県警が15人を公職選挙法違反容疑(買収・被買収)で逮捕。うち13人を鹿児島地検が起訴した。鹿児島地裁は07年2月、12人全員に無罪を言い渡し(1人は公判中に死亡)、検察は控訴せず無罪が確定した。家族の名前などを書いた紙を踏ませる「踏み字」などの捜査手法が問題化し、事件を機に、取り調べの一部可視化などの取り組みが始まった。