主要50ヵ国“デジタル経済”発展度ランキング

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eコマースの発展が最も急速に進んでいる国はどこか。タフツ大学の研究者らが独自の指標を基に、50カ国におけるデジタル経済の「勢い」を可視化した。欧州諸国や日本を含め、高度のデジタル環境がありながら停滞している国々も少なくない。

 

 2014年、世界におけるデジタル経済の発展の度合いは地域によってさまざまであった。成長が急激に進んだ国々もあれば、途切れがちだったところもある。この年の終わりに7大新興国(ブラジル、ロシア、インド、中国、メキシコ、インドネシア、トルコ)の経済規模は、購買力平価でG7を上回った。また、アジア太平洋地域の消費者が2014年にeコマースで使った金額は、北米を上回ったという予測もある。つまり、eコマースの消費者へのサービス機会は拡大しているということだ。問題は、どの地域なのかである。

 eコマースの発展は、中国やアジアに限った話ではない。シリコンバレーからも上海からもシンガポールからも遠く離れた、ドイツに本拠を置くロケットインターネットという企業がある。新興国市場とフロンティア市場のいたるところでeコマースの新規事業を立ち上げている同社は、こんなミッションを掲げている――「米国と中国を除く地域で世界最大のインターネット・プラットフォームになる」。他にも“ロケット”のように勢いのある多くの企業が、米中以外の世界をターゲットに、第2のアリババやアマゾンになろうと意気込んでいる。たとえばアフリカ9カ国で操業するジュミア(Jumia)、中東ではナムシ(Namshi)、東南アジア諸国ではラザダ(Lazada)とザロラ(Zalora)、インドではジャボング(Jabong)。そしてアフリカ、アジア、欧州と中東にわたって34カ国で操業するケイム(Kaymu)などだ。

 プライベート・エクイティとベンチャーキャピタルの資金は最近、特定の市場に集中しており、その様相はかつてシリコンバレーで起きた「エレクトロニック・ゴールドラッシュ」を彷彿させる。インドでは、2014年の夏だけで30億ドルの資金がeコマース業界に流入した。この市場ではフリップカートやスナップディールといった現地の革新的企業に加えて、200社近い新興eコマース企業がプライベート・エクイティやベンチャーキャピタルから潤沢な資金を調達している。

 インドのオンライン販売業者は、主にキャッシュオンデリバリー(COD、現金着払い)ベースで運営している。クレジットカードやペイパルはめったに利用されない。実際、インド準備銀行によれば、インドの金融取引の90%が現金で行われているという。アマゾンでさえ、インドでは現地に合わせてCODを提供している。インドネシアやコロンビアといった中所得国も押しなべて現金に大いに依存しているが、「現金が王様」のこうした国々でさえ、デジタル市場のイノベーションは目覚ましい速度で進んでいるのだ。機敏なeコマースのプレーヤーたちは、現金至上主義を素直に受け入れて対処している。

 世界各地で起きているこうした変化をもっと理解するために、我々はある指標を開発した。国々をデジタル経済への準備態勢の観点から比較する、「デジタル・エボリューション・インデックス(DEI)」である。我々が所属するタフツ大学フレッチャー・スクールがマスターカードおよびデータキャッシュの支援を得て作成したこの指標は、4つに大別したドライバーに基づいている。①供給要因(アクセス、フルフィルメント〈商品販売における一連の管理業務〉、取引インフラなど)、②需要要因(顧客の行動パターンと動向、金融/インターネット/ソーシャルメディアへの精通度など)、③イノベーション(起業/技術/資金調達のエコシステム、破壊的変化のあり方とレベル、起業を促進する文化やマインドセットのあり方など)、④制度(政府の能力、ビジネス/法整備・規制/デジタル・エコシステムの推進における政府の役割など)だ。

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