インターネットバンキングの不正送金の被害が深刻化している。2014年の被害額は29億円を超え、13年比で約2倍に膨らんだ。地方の金融機関で被害が集中し、企業のネット銀行口座が狙われた。相次ぐ被害を受け、金融庁は2月に新たに監督指針を公表し、金融機関のセキュリティー対策の強化を義務付けた。ただ専門家は「現状と離れすぎていて実行するのは難しい」と疑問視する。
■寝る間も惜しみ、“四六時中”ネット上の会話を監視
「私は昨晩、6時間寝てしまったから、すでに専門家でなくなってしまった」。名和利男氏はこう戒める。日本のサイバーセキュリティー対策の第一人者で、国内外で最も名前を知られる専門家の一人だ。現在は米大手のファイア・アイ日本法人(東京・千代田)のCTO(最高技術責任者)と、サイバーディフェンス研究所の上級研究員を務める。過去には、航空自衛隊でシステムの運用監視にあたってきた。
そんな彼でも睡眠中は攻撃者の動向を把握できない。その間にサイバー攻撃のリスクを広げたと考え、自己反省する。
専門家は四六時中、攻撃者のネット上の会話を監視し、次の攻撃を予測している。それでも、現在の攻撃は防げないのが現状だ。にもかかわらず、金融庁の監督指針は「銀行員に技術的に高いレベルの対策を求めている。どう考えても実行は難しい」。
金融庁は2月、監督指針の一部を改正し、ネット銀行や金融システムなど4項目にわたって、必要なセキュリティー対策を記した。金融機関は対応で不足があれば、行政手続法に基づき行政処分の対象になる。最悪の場合、営業停止の処罰も科されかねない。監督指針は「第2の法律」のような存在だ。
問題は第2項の「サイバーセキュリティ管理にかかる監督指針等の改正」だ。サイバーセキュリティ基本法や「高度化・巧妙化」する世界のサイバー攻撃状況を踏まえ、最新の安全対策を施すことを求めている。
そもそも近年の「高度化・巧妙化」したサイバー攻撃は、現在普及する対策製品ですら検知できていない。ところが指針は、最新の安全対策を施せば攻撃を防げることが「前提」になっている。
言い換えれば、金融庁は金融機関で被害を確認したとき、指針を盾にして「最新の安全対策を施していない」として、厳しい処罰を下す可能性がある。
金融庁は既存の対策製品が、すべての攻撃を防げるという考え方を持っているようだ。しかし、その発想自体が現実に沿っていない。名和氏は記者にこう問う。「自分のパソコンに、未知のウイルスが混入していないと確信が持てますか」
サイバーテロ、金融機関、ネット銀行
インターネットバンキングの不正送金の被害が深刻化している。2014年の被害額は29億円を超え、13年比で約2倍に膨らんだ。地方の金融機関で被害が集中し、企業のネット銀行口座が狙われた。相次ぐ被害を受…続き (5/14)
2015年は日本で放送とインターネットの融合が本格的に進む元年とみられている。しかし、その潮流に影を落とすのが推進役として期待されてきたNHKの混乱だ。ネット配信に前向きな籾井勝人会長は様々な言動が…続き (5/7)
販売した携帯電話端末を他の携帯会社では使えないようにする「SIMロック」の解除義務化が5月1日に始まることを受けて、携帯電話の主要販路である家電量販店が相次いで格安SIMカードなどの販売拡大に動き出…続き (4/30)
各種サービスの説明をご覧ください。
・テックファーム、カジノ関連事業の専門チーム、電子マネーシステムに的
・データ分析で最適販促策 IMJがサービス
・グリーンパワー、風力発電開発を25%上積み
・ファインシンター、トヨタの新設計に対応、米エンジン部品工場の生産増強
・レナウンの「ダーバン」、アウトレットへ出店増、百貨店以外に販路拡大…続き