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レ・ミゼラブル04

 投稿者:The logic in the place  投稿日:2014年12月13日(土)00時45分10秒
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  ファンテーヌの苦闘 続き

 翌朝、まだ朝日が上がるまえに、縫い物仕事をするときの二人のためのロウソクを灯そうと、マルグリットがファンテーヌの部屋に入ろうとすると、青白い凍りついたような顔のファンテーヌが寝椅子にすわっているのが見えた。ベッドで寝なかったのだ。膝に帽子が落ちている。一晩中灯されていたロウソクは、ほとんど燃えつきかかっている。
 予想もしていなかった光景にびっくりして、老婆は戸口で立ち止まり、声をあげた。「どうしたっていうの!ロウソクが燃え尽きかかっているよ。何があったの」
 そう言って、まばらな髪越しにロウソクを反射している悲しげなファンテーヌの頭を見た。ひと晩で十も歳を取ったように見えた。「ああ、神よ!」マルグリットは声をあげた。「どうしたっていうの?」「なんでもないの」ファンテーヌは答えた。「心配はいらないの、うまくいったから。お薬がなくて、恐ろしい病気でうちの娘が亡くならずに済むのだもの、これで満足よ」そう言うと、テーブルに置かれたにぶく光るナポレオン金貨2枚を指差した。「まあ!」マルグリットは声をあげた。「どこから、そんな20フラン金貨を手に入れたの?」「稼いだの」そう言うと同時に、ファンテーヌは笑った。ロウソクの炎が顔を照らす。強張った笑みとともに、唇の端が血で汚れ、ならんだ歯のなかにぽっかりと黒い空間ができているのが見えた。前歯が二本なくなっていた。彼女は40フランをモンフェルメイユに送った。病気のことは、テナルディエ夫婦のでたらめで、コゼットは病気にかかってはいなかったのに。
 ファンテーヌは、窓の外に鏡を投げ捨てた。ずっとまえから彼女は二階の狭い部屋を出て、ドアをただ留め金で閉めるだけの粗末な屋根裏部屋に移っていた。天井が斜めにかしいでいるために、いつも頭をぶつけそうになる。よくあるタイプの屋根裏部屋だ。貧しい者はアパートの部屋から追い出され、さらに運が悪くなり、どんどん不自由な状況に追い込まれる。分割払いで家具を売った業者は、いままで以上に無慈悲な態度を取るようになった。中古業者はほとんどの家具を回収したあげく「おい女、いつになったら残りのカネを払うんだ?」と頻繁に取り立てに来ていた。
 ああ!彼女に何ができただろうか?追い詰められたファンテーヌのなかに、野獣のような感情がひろがりはじめた。そのころテナルディエから、もっとたくさん送金してくれ、すぐに100フラン送ってくれなければ、病気から回復したばかりの小さなコゼットを寒風が吹く外の街道に追い出して、あとはどうなるか知ったことじゃないからな、という手紙が届いた。「100フランですって」ファンテーヌは考え込んだ。「でも、一日に100スーでさえ稼げないのに、そんな大金をどこから手に入れられるっていうの?」「ああ!」彼女は決心した。「残っているものを、すべて売ってしまいましょう」不幸な女は、路上で身体を売るようになった。

 ファンテーヌの半生は、何を示しているのだろう?それは、社会が奴隷を生み出しているということだ。原因は?社会が無慈悲だからだ。飢え、寒さ、孤独、絶望、生活苦などのせいで哀れな物々交換が起きる。一切れのパンのために、魂が売られる。無慈悲なことが行われていても、社会はそれを直そうとはしない。
 イエス・キリストの神聖な教えが人間文明を正そうとしても、まだ十分に行き渡ってはいないのだ。ヨーロッパ社会からは奴隷がいなくなったと言われているが、それは誤解だ。奴隷はいまでもいる。女性たちだけが“売春”という名の下で、自由を奪われた生活をしているのだ。
 女性が、善意、弱さ、美しさ、母性といったものを持っているからこそ、そこに社会はつけいるのだ。男性の責任ばかりではない。物語がここまで悲惨な状態に陥ったため、ファンテーヌにはかつての面影は残っていなかった。堕落して、自暴自棄になっていた。誰かが彼女のこころにふれれば、その冷たさにぞっとしただろう。往来をさまよい、誰ともわからない男を誘う。汚れた無表情な顔をしている。人生も社会秩序も、もう関係ない。その場その場を、刹那的に生きているだけ。ただ、あるがままに生きるだけ。すべてをうけ止め、すべてに耐え、何でもやり、ありとあらゆる苦しみを味わい、すべてを失い、そういったすべてのために泣いた。
 “死”と“眠り”が似ているように、“あきらめ”と“無関心”も似通っているのだが、その二つに駆られながら彼女はすべてを投げ出した。もう、何からも逃げない。怖いものなど残っていない。頭上の雲がみんな落ちてきて、大海原が押し寄せてそれに飲み込まれようとも、かまわない!何でも来い!スポンジのような身体は、もうずぶ濡れだった。
 そう思い込んでいたのだが、自分の運がつきたとか、もうこれ以上ないほとんど、どん底に堕ちたと決め付けるのは間違いだ。ああ!こんなめちゃくちゃな半生は、いったい何のためにあったのか?みんなはどうなってしまうのか?なぜ、こんな仕打ちを受けなければならなかったのか?
 すべてのひとびとの人生を見通すものがいる。そのものもまた、孤独だ。かれは“神”と呼ばれている。(ファンテーヌの苦闘 第一部 -完-)

*先生のスピーチでファンテーヌとテナルディエ夫婦の手紙でのやり取り部分が理解できます*
*次回からT川ならぬバマタボアがファンテーヌに罪をかぶせ、こっそり逃げ出しジャベール*
*にファンテーヌが警察署に連行され、ジャンバルジャン(市長)が助け出し、病院で亡くな*
*るところまでをまとめますね*

 
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