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「本気で物販」、リアルサービスを強化するauの「生活革命」とは

 KDDIは14日、2015年夏モデルの発表会を開催し、今夏に発売するスマートフォンやタブレットといった新端末を披露した。加えて、従来のモバイルサービスとは異なる“リアルサービス”として「au WALLET Market」を発表、auショップを経由した物販事業に、本気で取り組んでいく方針を、時間をかけて説明した。

冒頭に今夏のテーマ「Summer au」と新CMを発表

 発表会では、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇すると、まずこの夏のテーマとして「Summer au」というキャッチコピーが明らかにされ、好評を博しているというテレビCMのシリーズの出演者から、松田翔太、有村架純が登場。夏をテーマにしたトークや、CMの撮影風景などを振り返った。

あたらしい自由=生活革命=モバイル+リアル

 夏モデルの発表に移ると、田中社長は2015年春モデルと発売した端末が好調であることや、「au WALLET」が2月24日に1000万契約を突破するなど、足元の状況を解説する。

 その上で、auのキャッチコピーとなっている「あたらしい自由」とは、毎日に「生活革命」を起こすことであると定義。生活革命の2つの軸として、同社が従来から提供している「モバイルサービス」に加えて、「リアルサービス」を据えた。

“ガラホ”がVoLTEに対応

 「モバイルサービス」の展開は、この日発表されている2015年夏モデルのスマートフォンやタブレット、関連したサービスということになる。

 田中氏は最初に、同社が“ガラホ”と呼ぶシリーズの新機種として、VoLTEに対応した「AQUOS K SHF32」を紹介した。VoLTE対応により、エリアは最新のスマートフォンと同様になっている。

 「見かけはいわゆるガラケーだが、Wi-Fiも、おサイフケータイもある。中身はけっこう充実している」と、前日にドコモから発表された「AQUOSケータイ SH-06G」で省略された機能が搭載されていることをさり気なくアピール。料金プランについても、従来のフィーチャーフォンのプランを意識した内容で新設したことを明らかにし、ダブル定額ではパケット単価を変更して、2段階定額の上昇角度が現実的なものになるよう調整したことにも触れられた。

今夏の端末のテーマはカメラ

 スマートフォンの新モデル7機種については、「Summer au」というテーマを掲げながら、特にカメラ機能にこだわってラインナップされたことがアピールされた。

 「Galaxy S6 edge」は、インカメラにもF1.9という明るいレンズが搭載され、「Xperia Z4 SOV31」では、カメラに料理の撮影モードを搭載。「AQUOS SERIE SHV32」はスーパースロー映像の撮影が可能で、「isai vivid LGV32」にはF1.8のレンズ、「HTC J butterfly HTV31」ではインカメラにも1300万画素のカメラ、「TORQUE G02」は海中撮影も可能と、カメラという切り口で端末のラインナップが紹介された。

 タブレットについては、ビデオパスなどでの利用実態に基づき、先進層はでマルチデバイスで利用しているという調査を示し、タブレット2機種を発表した。10.1インチの「Xperia Z4 Tablet SOT31」は世界最薄・最軽量で防水とし、8インチの「Qua tab 01」も防水をサポート。「タブレットでも意外と防水は必要だということ」とユーザーの声に応えたラインナップであるとした。

リアルサービスに本気、先触れはau WALLET

 スマートフォンや関連サービスの紹介を終えると、冒頭に掲げた「生活革命」のもう一方の具体策である「リアルサービス」の説明に移った。

 リアルサービスですでに成功を収めているのは、開業1周年という「au WALLET」。1年が経過した2015年5月の時点で申込件数は1200万件を突破したとのことで、ユーザーの使い方や便利な声が紹介された。

 その中では、「“どこのコンビニでも”au WALLETポイントが貯まる」と、前日に発表されたドコモとローソンとの取り組みを意識したようなアピールを混ぜつつも、子供などに持たせて使えるプリペイド式であることや、海外で使うといった事例、決済ではなく予約だけで「au WALLETポイント」が貯まる仕組みで予約数を伸ばしているサービスなどが紹介された。

 また、ガソリンスタンドの出光が「au WALLET」に対応したことも明らかにされ、ポイントアップ店は7月上旬で43社、2万8000店舗に大幅に拡大することがアピールされた。さらに、じぶん銀行も「au WALLET」との連携を拡大し、給与振込みや月末時点の残高、振替といった利用で、年間最大1290ポイント(WALLETポイント)が付与される取り組みも紹介された。

auショップで物販、Eコマースの体験をスタッフがガイド

 この日明らかにされた新しい取り組み「au WALLET Market」については、田中氏は「auショップをグレードアップしていく。日々のお買い物を自由にしていきたい」という意気込みとともに紹介した。

 KDDIの社内の担当者が、サービス紹介のために登壇するケースは、ここ最近では少なくなっていた。今回の発表会では、コンシューママーケティング本部 コンシューマビジネス開発部長の村元伸弥氏が、「au WALLET Market」の説明のために登壇。auのロゴが入った、酒屋のような特製の前掛けを付けた格好で、プレゼンテーションを行った。

 村元氏は、Eコマース市場が拡大し、ものを買う動線は拡大する一方で、その市場規模から、大多数は未だリアルな店舗でものを買っていることの裏返しであると指摘。ユーザーはさまざまな手段で購入を検討するようになっているとした。

 しかし、「実は、そういう流れに乗れないお客様もたくさんいるのではないか。面倒くさかったり、本当に欲しいものを見つけられなかったり、クレジットカードの入力が不安だったりする。そういうケースが潜在的に非常に多いのではないか」と村元氏は推測し、「なんとか我々のビジネスでタッチして、安心してお買い物をしていただきたい。auが、本気で物販に参入する」と経緯や意気込みを語る。

 同氏は、auの資産は3600万人の顧客基盤と、全国2500店舗のauショップであるとした上で、auショップには月間1000万人のユーザーが来店すると紹介し、「このユーザー数と店舗数が成功へのアセット(資産)。キャリアはユーザーのいろいろなライフステージに寄り添っているが、通信サービスだけでは応えられていないのではないか。対応しているショップスタッフは大きな財産であり、ビジネスに活かして、源泉としたい」と、ショップをこれまでとは異なる切り口で活用していく方針を示した。

 何を販売するのか? という自問には、「日々買うものを、少しいいものにしたもの」と説明。白米、飲料水、コーヒー豆、野菜、肉といったものが、少しこだわった内容の商品でラインナップされることが明らかにされた。

 食品だけでなく、雑貨も「すこしいいもの」がセレクトされラインナップされる。ここでは「from HYPER MARKET」とスライドに記されていたが、これはスマートフォンアクセサリーなどの雑貨を原宿で販売する店舗のことで、実は、KDDIが運営している店舗とのこと。一小売企業としての知見を得るために、KDDIが運営しているということを表に出さなかったという。雑貨以外にもIoTを意識した製品として、水やりのタイミングを知らせる花瓶、雨を知らせる傘立てなども、「au WALLET Market」のラインナップに加えたいと紹介された。

 具体的な購入方法は、auショップの店頭で、スタッフがもつタブレットから購入する。KDDIの直営店であるau SHINJUKUで試験的に提供した、サイネージのによるEコマースでは、スタッフがその内容を案内することで販売が伸び、また利用者の半分はEコマースの利用自体が未体験だったという。

 こうしたことから、「au WALLET Market」は、auショップでの待ち時間などに、Eコマース未体験のユーザーでもスタッフの案内でEコマースを利用できるという点や、待ち時間を有効に活用するとう点が、背景にあるコンセプトになっている。

 仕組みはEコマースだが、auショップのスタッフが持つタブレットからのみアクセスでき、auショップに来店したユーザー向けのサービスになる。au IDを利用すれば、住所や決済も簡単に行える。当初は4店舗あるKDDIの直営店で夏から開始する。

 食品や日用品などは定期購入も可能で、この場合は内容の変更、中止といった操作をスマートフォンやパソコンから行えるほか、電話のサポートセンターでも受け付ける。商品は基本的に自宅または指定の住所に配送されるが、受け取り場所にauショップを指定することもできる。

 村元氏は、「auショップを、さまざまな価値を見つけるブランドの体験スポットにしたい」と意気込んだ。

体験型サービスをWebサイトで販売

 「au WALLET Market」での取り組みでは、auショップでの販売のほかに、Webサイト上で「au WALLET Market Powered by LUXA」として、ホテルの食事やトレーニングジム、エステ、セスナ飛行体験といった体験型サービスや、地方のこだわりの名産品を、割安な価格で提供するサービスも展開する。こちらはルクサと提携して提供されるもので、説明に登壇したKDDI バリュー事業本部 金融・コマース推進本部長の勝木朋彦氏は、「仕入れ開拓能力とタイムセールを組み合わせることで価格を抑えている」とした。

 田中社長は、「本気で物販をやっていきたい。auショップをもっと活性化していきたい」と、auショップを活用したリアルサービスの展開に意気込みを見せた。

「ガラケーとスマホのいいところを、ガラケーの形の中に入れた」

 質疑応答の時間には、前日にドコモが発表したローソンとの提携に絡んで、au WALLETの特徴が聞かれた。田中氏は、「au WALLETを始めた時は、通信事業者がなんでこんなことをするのかと言われた。ドコモもソフトバンクも、au WALLETっぽいものを導入したのは、我々の戦略が正しかったということでは。グローバルでもこうした動きは出ており、問い合わせもある。先行者として頑張っていこうと思う」とした。

 同氏はまた、その違いについて、「大きく違うのはオープンだということ。特定のコンビニだけの話じゃない。ポイントをマネーに替えられ、どこでも使える。“提携”じゃない。オープンで決済サービスを作っている」と説明している。

 端末に関しては、“ガラホ”と呼ぶ「AQUOS K SHF32」について、ドコモから発表された「AQUOSケータイ SH-06G」との違いが聞かれた。田中氏は、「他社のはそもそも“ガラケー”で、中身がAndroidというもの。我々はガラケーとスマホのいいところをつなぎあわせた。通信が高速なところ、Wi-Fi、テザリングなどで、ガラケーの形だけれども、いろんな機能をエンジョイできる。料金もガラケー並にした。ガラケーとスマホのいいところを、ガラケーの形の中に入れた」とし、中心となるコンセプトは大きく異なっている様子を示した。

 また、KDDIの商品・CS統括本部 プロダクト企画本部長の小林昌宏氏は、「我々はガラケーを作りたかったのではなく、進歩させたかった。高速で、オープンなネットワークやサービスに接続できるよう進化させた。クアッドコアCPUを搭載しているが、料金はガラケーに合わせて、Wi-Fiで節約もできる」と具体的な特徴にも言及された。

(太田 亮三)