鬼の形相に変わった。2度仕切り直した後、照ノ富士(23=伊勢ケ浜)は右で張りにいった。「腹が立った」。逸ノ城の左腕に阻まれたが、すかさず右を差す。切られると左上手を取り、間髪入れず豪快に投げた。「先に手をつかせてやろうと思ってもつかないし、そんなら俺がつこうと思っても全然合わせないし…」。右を差すつもりでいたが、怒りで方針転換。2場所連続の水入りで1勝1敗だったライバルを、7秒7で仕留めた。

 2学年下の逸ノ城とは10年3月にモンゴルから同便で来日し、前日の支度部屋でも隣で談笑していた。普段からかわいがる207キロの後輩だが「先に上手を取れば勝てる自信がある。気合入ってたから、あんまり重さも感じなかった。張ってなかったら、こんな短くなってなかったな」。大関昇進を狙う今後の戦いへ疲労も残さず、満足そうにうなずいた。

 取組にはファンの投票で決まる懸賞「森永賞」も懸かった。通常、結びの一番など終盤の取組が多い中、最大の注目を浴びた。春場所のような覇気も復活し「今場所初めての気合入りっすね」。気迫で難敵を退け、まずは昇進目安の13勝へ突き進む。【桑原亮】